“観る”から“聴く”へ Voicyが変える、音声メディアの未来

“観る”から“聴く”へ
Voicyが変える、音声メディアの未来
(後編)

編集・構成:井尾淳子
撮影:越間 有紀子
日程:2021年7月5日

緒方 憲太郎(写真/左)

Voicyの代表取締役CEO
連続起業家・投資家・公認会計士・ビジネスデザイナー。大阪大学基礎工学部卒業後、大阪大学経済学部卒業。同年公認会計士合格。2006年新日本監査法人、Ernst&Young NewYork、トーマツベンチャーサポート、にて複数企業を支援。15年医療ゲノム検査事業のテーラーメッド株式会社を創業、3年後業界最大手上場企業に事業売却。16年株式会社Voicy創業。近著に『ボイステック革命 ~GAFAも狙う新市場争奪戦』(日本経済新聞出版)がある。
https://corp.voicy.jp/

福田 淳(写真/右)

スピーディ・グループ C E O
金沢工業大学大学院 客員教授 / 横浜美術大学 客員教授
ソニー・デジタルエンタテインメント社 創業社長
1965年 日本生まれ / 日本大学芸術学部卒
コンサル業務以外にも、女優”のん”などタレントエージェント、ロサンゼルスを拠点としたアートギャラリー運営、不動産事業をはじめ、中国の新経済特区マカオをベースとした日中エンタメ開発、エストニア発のブロックチェーンを活用したNFTビジネス、企業向け“AIサロン‘を主宰、沖縄でのリゾート開発・ハイテク農業、日本最大のeコミック制作、出版業など活動は多岐にわたる。
カルティエ「チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー」、ワーナー・ブラザース「BEST MARKETER OF THE YEAR」など受賞。著書、講演多数。
公式サイト:
http://AtsushiFukuda.com

日本は18歳で学びが止まっている??

福田:緒方さんのように、グローバルなバックグラウンドがある人が日本のマーケットに貢献するのかもしれませんけれど、逆にいえば、Voicyというのはグローバルなブランドを目指すのでしょうか?

緒方:グローバルなブランドにしたいですね。

福田:そのときにはどの国を? やはり英語圏ですか?

緒方:社会的インパクトは絶対に英語圏が強いです。そこで、「何を持って海外に出すか」というところがすごく大事で。日本のサービスで海外に出してはみたものの、機能していない…というものはめちゃくちゃ多いですから。それはもう、エンジニアの量も、働いている量も全然、違うわけですよ。日本は1人あたまの生産高もとても低い国なので。そこで戦うのは、なかなか大変です。

福田:日本人の一人あたりの生産性が低いのはどうしてなのでしょう? 終電間際まで働いているとか、いっぱい働いているようなプレゼンテーションですよね。

緒方:先日、5歳ごとに分けて「1週間で何時間学んでいますか?」というグラフのデータを見ました。それによると、25歳以降は、1週間で5分も学んでいないらしいです。

福田:本当ですか!?(笑)みんな、そんなに学んでいないんですね。アウトプットばかりでインプットなしだったんですね!

緒方:職場でOJT(*3)しているだけで、職場の時間以外はオフだから。「もう仕事終わった! 解~放!」となったあとは、学びはほぼ、やっていないんですよ。(学ぶのは)大学まで。大学ですらもあまり学んでいないから、大体みんな18歳までしか学んでいないかもですね。

福田:18歳の状態のままだから。それは生産性が18歳のままという。面白いな。

緒方:そう。つまり8時間の業務の中で効率的にすることしか学んでいないということでしょうね。

福田:イタリア人の生産性が高かったのはなぜかな、とある時に思ったんですよね。以前、イタリア人の働き方をテーマにしたドキュメンタリーをやっていて。ランチは2、3時間取るけど、大体職場以外の人と、飲み食いをしていました。あれがちょっとした学びの場になっている可能性がありますね。

緒方:そこはあるでしょうね。少し話がずれますけれど、イタリア人は街を歩いていてもナンパをしまくっていますよね。常にモテようという意識がとても強いと思います。あれは、成長の根源になっていると思いますね。

福田:たしかに、ナンパも社会との接点だ! 日本人は大体、同じ人としか話していないですものね。コロナ禍はとくに、Zoomも社内とか、知っている人としかやらないから。この1年はきっと出会いゼロですよ。これまで以上にインプットや学びがないかもしれない。

緒方:新しいものを学んでいないですよね。学んでいるものは、組織内の風習とかになっていて、新しい価値を作るほうに学びを作っていないように思います。どちらかというと、食いっぱぐれないように英語を勉強するとか、食いっぱぐれないように簿記を取るとか。でも、新しい学びはそっちではないんですよ。

福田:だから、自分がない人が多いですよね。いろいろなフィルターを通じて自分を育てるから。緒方さんのいう本来の学びをやってきていないという。

緒方:簿記ができるとか、PowerPointが作れるなどの力は、ソフトスキルだと思うんです。一方でハードスキルというのは、ファミコンのハードみたいなもので、対人能力をどうするかとか、理解度をどう増やすかとか、視野の範囲をどう広げるか、精神的ストレスにどう強くなるかとか。そちら側を鍛えている人はとても少ない。これがないと、そもそも上に物が乗らないんです。「簿記をやって、宅建を取ったら何とかなる!」みたいな時代は終わったので。

福田:そこに気づいていない。でもまだ、資格を取りたがる人は多いですよね?

緒方:そうですね。僕が思うに、ハードスキルをつけないで生きるほうが、楽なことだと思っているからではないでしょうか。不労所得とか、そういう手数料ビジネスも含めて。とにかく、筋トレをしないで、身体を強くせずに物を運びたい、という。

*3…On the Job Traininngの略で、新人や未経験者に対して、実務を体験させながら仕事を覚えてもらう教育手法。

TOPへ