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リスクをとろうとしない投資家

“観る”から“聴く”へ Voicyが変える、音声メディアの未来  Talked.jp

福田:新規事業について、日本の課題みたいなところは、緒方さんはどのようにお考えでしょうか。

緒方:お金がついたら初めて「なるほど」となるところでしょうか。それに日本もまだ投資家が未熟で、投資した事業で成功を収めて、また事業を展開するような投資家は少ないですよね。なので、今SaaS(*5)と言われるような、売りが積み上がっていくようなものだったら評価をして、お金を払うとか。むしろ、投資家が打率の話ばかりしているのが現状ですね。僕らがプレゼンをしても「いや、Voicyさん。Facebookみたいにドーンっとなったらすごいですけど。じゃあ来年の売り上げはちゃんとたつのですか?」みたいな、そんな感じできて。

福田:三カ年計画主義みたいな感じですね? 

緒方:はい。だから「長期的にも応援する」と言って出資する投資家は、やはりすごく少ないです。この間、言われてびっくりしたことがあって。「いやー。すごく大きくなった。頑張っていると思うのですけど、このチームは今後すぐに、ほかのSNSと戦えるくらいファイナンスできるのですか? そういう力がないと難しいと思いますけど」って。いや、あなたが投資家ですよね1?みたいな……。

福田:まるで「チャレンジなし」なわけですね。

緒方:そう!「今後もファイナンスできる確証をもう少し取ってほしい」とか。

福田:それをやらなければいけない人が、「それをやるための条件を整えてくれ」と言っていると? わけが分からないですね。

緒方:もう「孫さんの出資を取ってきますとか、そういうことがあるのだったら今出してもいいです。あなた、鶏の卵を初めに作るひとでしょ?」という感じなんですよね。

福田:えー!

緒方:一度成功した社長だとか、企業だとか、「そういうところに大きく貼るためにお金を出すよ」みたいなところでまだ、日本の新規マーケットづくりのところは止まっていると思います。あとは、日本のお金持ちのほとんどが不動産と金融なので。つまり、投資家に対してお金を入れている人が金融なので、彼らは上がって下がればべつにいいわけなので、「社会的意義のあるところに出してくれ」とか、そういう思考ではないんですよね。

福田:社会性が欠けている?

緒方:はい。だから、その投資家自体も「まあ、そうは言っても、あなたたちのところの、そうはめちゃくちゃ稼げないと分かっているところにお金を出すには、説明ができないのです」みたいな感じです。

福田:その辺がおかしいのですね?

緒方:そこがやはり、こういう中で新しい文化づくりをするという事業は大変だなと思います。

福田:スケールの問題はさておき、僕なんかは新規事業をやるのが大好きなのですけどね。たまたま沖縄にいるから「リゾートやろうか」とか「農業やろうか」とかってなるのですけど。年齢と経験から最早PowerPointスタートアップみたいな投資をお願いすることもできません。 農業で「1000坪なら1000坪の土地をモジュール化させて、その中で年間収支が取れるような現実のビジネス単位を作ってから、この100倍にしたいので、投資募ります」ってやろうかなと思っても、もう1000坪で成功の方程式わかっちゃってるので、結局はずーっと自力でやることになります(笑)

緒方:(頷く)もう、自分でペイするところまで持っていって、そこからスケールみたいなことになってしまいますよね。

福田:そういうふうになってしまいますよ。だからお金持ちというのはよっぽど心に余裕があって、「ああ。それは社会のためになるかもしれないな」と思って、出す人がいるのかと思ったら本当に……。

緒方:いない!

福田:まさに。

*5…Software as a Serviceの略で、ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネット経由してユーザーが利用できるサービスのこと。

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