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寛容な社会をあきらめなければ、 日本の芸能界も再起動できる

リケジョ・武道家・女優リーナ・リー  Talked.jp

福田:ハリウッドだったらトム・クルーズが一番偉くて、運転手も会計士も弁護士も付き人も雇って、1つの会社組織として「経営」しているわけじゃない?

リーナ:中国もそうですね。家族で経営していたり。

福田:中国もそっちだよね。だからやっぱり、タレントさんに才能があるわけで、我々エージェントは、そのお手伝いに過ぎないのです。それなのにマネージャーのほうが偉いと思って、「仕事取ってきてやるよ」なんて言ってるうちにネットがテレビを上回って、急にテレビ業界がシュリンクして不況になっているわけでしょう。

リーナ:狭くなるんですよね、可能性が……やっぱり。

福田:僕は最初に映像製作の会社に入社してCM制作も経験したのですけど、iモードから始まったインターネットの会社を10年以上経営したことが、自分のキャリアにとってすごくよかったと思っています。今56歳ですけど、キャリアの中では、アナログの時代のほうがもちろん長かった。だからこそDX化していくためには勉強も必要だし、困難が多いわけです。けれどそれを面白がって勉強している。そこに年齢は関係ないと思っていて。

リーナ:年齢は関係ないですよね。

福田:だけどそれを年齢で見たり、ジェンダーで見たり、「この業界はこう」と決めつけたり。芸能界に限らず、そういう人はコロナによって炙り出されて魅力がなくなってきていると正直思います。新卒から40年間同じ会社にいて、来月の売上とか、3か年計画とかをやっていたら、その人が新しいことを生みだす力って、いくら優秀な人でも失われますよね。でもそれは日本の損失だから。もう1回その人たちを再起動させるようなリブランディングを、もうちょっと僕が年齢を重ねたら、やりたいなと思っています。そうでないと、社会のノウハウとか知的なものが積み重なっていかないと思うので。 だから、演技をして人を喜ばせるとか、豊かな気持ちにさせるっていうのは、いろいろな能力の中でもかなり特殊な能力で、みんながみんな憧れてできるものでもないから……リーナはこの道を追及してほしいです。

リーナ:女優は生涯の仕事にしていきたいのですが、でも私は、演技をして感動を与えることだけを100%の目標にはしていなくて……。というのは、私は田舎出身でハリウッドという目標があって、それに向かって今自分が努力していることを「田舎出身限定」とは言いませんが、若い人たちに伝えていきたいんです。「いろいろな価値観があるから、自ら狭くしたり、決めつけたりしないで」と言いたいですね。

福田:そうだね。それも「石の上にも三年」みたいな古い概念が阻んでいると思う。そう信じている、思い込んでいると頭がアップデートしなくて、脳のOSが「Windows95」のままの人が多いわけだよね。だからやっぱりOSを変えていかないと本当の意味で変わらない。でもそれには、「失敗を許す寛容な社会」が前提なんだよね。有名人の失言がすぐ炎上して、積み上げたキャリアをあっという間に失わせちゃうわけじゃない? そういったキャンセルカルチャーズ(*5)をどうすべきか、すごく悩ましい。「罪を憎んで人を憎まず」じゃないけれども、もともと影響力があって社会をリードすることだってできる才能ある人たちだと思うんですよ。多様な人がいて社会が成り立っているわけで、みんな同じ人だったら面白くないし、人類の進歩もないわけだから。だから、リーナのような多才な人が全身全霊で演技したり、発明したりして人を喜ばせるっていうのは、可能性しか感じないよね。

(*5)主に著名人を対象に、過去の言動を告発し、それに批判が殺到することで、職や社会的地位を失わしめる社会現象や社会運動のこと。

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