建築を社会と「再接続」する~若きテック系CEOの挑戦とは(前編)

建築を社会と「再接続」する
~若きテック系CEOの挑戦とは
(前編)

編集・構成:井尾淳子
撮影:越間 有紀子
日程:2022年3月4日

秋吉 浩気 (写真/右)

建築家・メタアーキテクト、VUILD株式会社代表取締役CEO 1988年大阪府生まれ。芝浦工業大学工学部建築学科を卒業後、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科X-DESIGN領域にてデジタルファブリケーションを専攻。2017年にVUILD株式会社を創業、「建築の民主化」を目指す。デジタルファブリケーションやソーシャルデザインなど、モノからコトまで幅広いデザイン領域をカバーする。主な受賞歴に、2018年SDレビュー入選、2019年SDレビュー入選、2019年Under 35 Architects exhibition Gold Medal賞、2020年度グッドデザイン賞金賞。
VUILD Webサイト
https://vuild.co.jp/
KOKI AKIYOSHI Twitter
https://twitter.com/aruteist

福田 淳(写真/右)

スピーディ・グループCEO
1965年日本生まれ / 日本大学芸術学部卒
ソニー・デジタルエンタテインメント社ファウンダー 
金沢工業大学大学院 客員教授 / 横浜美術大学 客員教授 
企業のブランドコンサルタント、女優”のん”をはじめ俳優・ミュージシャンなどのタレントエージェント、ロサンゼルスのアート・ギャラリーSpeedy Gallery運営、エストニアでのブロックチェーンをベースとしたNFTアート販売、1948年創業の高陵社書店(現 株式会社スピーディ・ブックス)を傘下におさめ、世界33カ国で出版事業を行なっている。 その他、沖縄リゾート、米国での不動産事業、ハイテク農場運営、ゲノム編集による新しい食物開発、スタートアップ投資など"文明の進化を楽しむ"をテーマに活動している。 カルティエ「チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー」、ワーナー・ブラザース「BEST MARKETER OF THE YEAR」など受賞。著書、講演多数。 公式サイト:
http://AtsushiFukuda.com
対談YouTube動画
https://www.youtube.com/channel/UC3oCfveGQgT2Lpx27O9NDIw

世界初の低価格木材加工ルーター ShopBotとは

福田:本日は、建築テック系スタートアップVUILD(ヴィルド)を率いる、秋吉浩気さんの秘密基地におじゃましてお送りしています。ここは横浜本牧にある三菱重工業の製作所(本牧工場内)で、秋吉さんはこちらに現場の本部を持っておられるのですが、まさかこんなユニークなファクトリーがあるとは思いませんでした。今日はよろしくお願いします。

秋吉:よろしくお願いします。

福田:秋吉さんがお生まれになった1988年は、僕が社会人になった年です。バブル全盛で、むちゃくちゃ景気がいい時でした。で、秋吉さんはというと、多くの受賞歴とご経歴を経て、(大学院卒業後)いきなりスタートアップされている。世代的格差があるのかもしれませんが、僕らの時代はインターネットがなかった。だから当時の理想的な進路というと、「いい大学に行って、大企業に入る」という道しかなかったんです。商社とか銀行とかね。でも秋吉さんの時代は、進路の選択肢はもっと多かったと思うのですが、その中でまずスタートアップされようと思ったきっかけはどういうものだったのでしょう?

秋吉:もともと、スタートアップをやるつもりはなかったんですよ。大学院を卒業して、「とりあえず生活費だけ稼げればいいや」と思っていました。ただ、学んできたことが3Dプリンターの研究など特殊だったので、就職してそのスキルを活かせる環境が当時はまるでなかったんです。なので大学院を選ぶ時点から、「自分はこれまでの建築とは違う新しい道に行くのだから、むしろそこのパイオニアになれれば、なんとかなるんじゃないか」という、ある種の博打に出たような感じでした。

福田:なるほど。でもやりたいことを貫こうという、強い意志がおありになったわけですよね。結果、このファクトリーですよ。ぜひ動画と合わせてご覧いただきたいのですが、秋吉さんのご活動について、読者のためにご説明していただけますか。

秋吉:みなさんが既にお持ちのスマホとかパソコンですが、1988年当時は、まだ「みんなが持っている」という状況ではなかったと思います。
そういう時代から30年くらい経って、今は子供がiPadでゲームをするのが普通という時代になっていますけども。かつては冷戦時代に使われた情報技術だったり、大学に1台あるかないかだったりした計算技術が、今では手のひらに収まって、テキストや写真を発信するツールになっていますよね。同様に木工技術も、かつては大工さんが手刻みで木を切るところから、ちょっと優秀な木材加工マシンが1980年代くらいに出てきたんですね。そこから技術としてはある程度頭打ちになって、どんどん安く、使いやすくなったというのが今の時代です。昔は1億、10億円くらいなければ整備できなかったような環境が、今は3000万くらいで出来るようになりました。僕らが販売しているShopBotという機械は500万で導入出来ます。つまりひと昔前は1億かかった設備投資が、500万円で工場を始められるようになったわけですね。

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