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メタアーキテクトとは何か

建築を社会と「再接続」する~若きテック系CEOの挑戦とは(前編)   Talked.jp

福田:スタートアップされたのは何年前でしたっけ?

秋吉:VUILD株式会社を作ったのは2017年11月です。会社を作ってから事業計画を考えて半年くらい。最初に出資してくださった孫泰蔵さんという投資家とLIFULLホームズを創業された井上高志さんという方がいるのですが、お2人にずっと壁打ちしてもらって、おおよその方向性が決まってから事業を始めました。

福田:なるほど。グローバル展開については、どのようなお考えでしょう?

秋吉:そこは、世界中に仲間がいるので。とくに僕らが売っている、先述の120台入れた機械ShopBotは、すでに世界で1万~2万台くらい入っていてむしろ世界標準機で、シェアNO.1なんです。そういう意味で言うとグローバル標準のものを扱っているから、そのデータをシェアすることも容易にできるわけです。

福田:そういうことも、今後の経営意図としてはおありになる?

秋吉:ありますね。例えば僕らがガチンコで分社化して…とかではなくて、すでにネットワークがあって仲間もいるので、そういう人たちとアライアンスを組めば、最終的には一瞬でスケールするんじゃないかなとは思っています。

福田:秋吉さんのご著書『メタアーキテクト──次世代のための建築』(スペルプラーツ)についてもお話を伺いたくて今回おじゃましたのですが、タイトルにあえて「メタ」と付けられた理由は何でしょうか?

秋吉:この本は1年かけて執筆しまして、書いてる時は、まさかFacebookがメタになるとは思わなかったんですけど…。

福田:だとするとFacebookからのタイトルではないですよね。

秋吉:はい。なので「くそー!」と思ったんですけど(笑)。「メタアーキテクト」は、自分がニート的に活動し始めた7年前から、ずっと名乗っている肩書です。最近は、同時に「建築家」とも名乗りますけれど。建築は好きだし、建築物も作っていきたいと思っていますが、当時は建築家と名乗っていいことって、あまりないなと思っていたので…。誤解を恐れずにいうと、アーティスト気質な人とか大御所とか、そういう見え方のほうが多いことに対して、あまりいい印象が正直なかったんです。建築は誰ものかと考えた時、作家や施主のためだけではなくて、社会のものであるべきでは、と。

福田:なるほど。だからスタートアップへの選択、ということにつながるわけですね。

秋吉:1個1個細かいところまで全てコントロールして、アーキテクト(建築家)の言うことを聞かないと先に進めない…というのが、たぶん作家主義的なアーキテクトのあり方だったんですけども。そろそろ戦後の「プロフェッサー×アーキテクト」の時代の栄光を捨てて、建築家が市民社会の視点でもって、「アントレプレナー×アーキテクト」に変わらなくてはならないのでは、と。人に委ねるというか、建築家や設計者に育てていくための技術を配るとか、教育プログラムを配る…それこそ、思想を配る。そういうところから立ち上がってくるデザインのあり方を「メタデザイン」と言うんですけども。デザインする支援環境、デザインが現れてくる環境自体をデザインしましょう、というのが面白い議論だなと思ったんですね。 例えば洋服でいうと、ただ見た目だけいいものを作るというのは、全然本質的じゃないですよね。本当は何が求められていて、世界にはどんな材料があって、どんな人がいて、どんなビジョンがあって、どんな将来像があるかなど、複合的なことをやっていく中で、トータルに作り上げていくものだと思うんです。建築でいえば、建設方法をどうするか、資金調達をどうするか、誰に関わってもらうのか。本当は全部決めていかなければいけないんですけど、一部しかやらないアーキテクトが多いのに、それがブランドになってしまっている。それを壊していかないと、社会との接続が全くなくなってしまう。もう、それぶち壊さないと、という思いから「メタ」という言葉を付けました。

福田:メタは建築業界へのアンチテーゼであり、パンクな挑戦というわけですね。

秋吉:アーキテクトをやりつつも、メタアーキテクトをやっている奴がちゃんと評価を得て、むしろ対等に勝負できるようになれば、ただ単にぶっ壊すだけのやつではなくて、むしろメインストリームのほうも塗り替えることもできるんじゃないかな、と思いました。今まではアウトローでカウンターカルチャーで、別の仕組みから戦おうとしていたんですけども、やっぱり本流も変えていかなきゃいけないんですよね。ビジネスの文脈で言うと、ハウスメーカーなどの住宅産業に踏み込んでいくのと同じで、普通にアーキテクトとしても戦っていきたいなというのがこの2~3年の考え方です。両方やっていることにやはり意味があると思っていて、1方向だけしか見ていないと、視野が狭いじゃないですか。なのでスタートアップというビジネスと、クリエイティブというアーキテクト、その両方をやるとお客さんの立場も分かるし、作り手の立場も分かるし。中立的な立ち位置でいろいろ見えてくるところがあります。

福田:なるほど、アーキテクトの多様性の始まり、というわけですね。究極の自律分散型アーキテクトは、自分で設計して自分でプリンティングして、自分で住んで暮らすってことですもんね。

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