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家業の節句人形店の売上を40倍に

中国テックビジネスのスペシャリストに聞くAI+アナログの最適解とは?(前編)   Talked.jp

福田:いきなり核心めいた話が深まってしまったのですが、読者の方に改めて説明をしますと、成嶋さんのもう一つのご本業は、土浦にある株式会社成島といって、「人形屋ホンポ」という、業界でもトップクラスの売上の節句人形専門店の経営をされておられます。通販サイトで節句人形を販売している会社で、楽天で一番売り上げるお人形屋さんとして知られているわけですが、成嶋さんは四代目にあたる社長さんでもある、と。 それも、かなり若い段階で跡を継がれたんですよね。大学生のときにお父さまが突然亡くなられて、「自分がなんとかしなきゃ」というところだったんですか? 前から心の準備があった?

成嶋:いや全く。心の準備は全くないので、一年半ぐらいぼーっとしていました。父が亡くなって祖父に経営が戻ったんですが、祖父が「こうやればいいんだよ」と、一応ひと通り教えてくれたんですよ。でもそれは「ああなるほど。分かりました」と、すぐ終わっちゃうんです。で、僕が(教わったことを)やろうとすると、「それはもう終わっているから」ということなので、ボーッとしているぐらいしか、することがないんですよ。一年ぐらい暇だな、どうしようと思って。当時はまだ、ネットもなかったんですね。

福田:いつ頃ですか?

成嶋:ちょうど2000年ぐらいです。当時はネットがないから、寒い日でもお客様は子どもを連れて、節句人形を見にくるんですよね。でも好みの商品がないこともあるじゃないですか。そうすると、子どもを連れてまた帰るわけです。これ、なんかあまりに非効率だなと思って、「商品の写真を出そうよ」と提案したんです。

福田:ネット以前のそんなに早い段階で。

成嶋:はい。でも写真を出そうとしたときに諸先輩方から「お前はばかか」と。「何を売っているかをバラすなんて、ありえない」と。

福田:手の内を見せるなんて。「店に来てこそじゃないか」ということですね。

成嶋:そうです。でもそのうち、問い合わせが増えてきたんです。つまりそのほうが無駄もないし、マッチングするわけですよ。そこから、「これはいくらですか」「忙しいので送ってくれませんか」という人も現れてきたんです。それでこっちも、「もう値段も書こうかな」と思ったんですよね。そうしたらまた「お前は本当にばかだ。いくらで何を売っているかバレたら、ほかに出し抜かれる。そんなのもうめちゃくちゃだよ」と、結構、怒られたんですよ。でも、毎回電話で「いくらです」って言うのがもうしんどくて値段を書いたんですよね。相当文句を言われましたけど。その後、配送センターを併設して、店舗販売と通販販売の両方で、そのまま続けました。まだガラケーの頃ですけども。

福田:iモード(1999年に始まったモバイルインターネット)の出始めぐらいですもんね。

成嶋:そうです。それでも、七段飾りとかを買うお客さんがいました。間口1メートル20ぐらいの商品を、3インチくらいの画面で見て買われるんですよ。「もし違う商品が来ても分からないんじゃないかな」とすら思いましたけど、初年度からどんどん増えて、40倍ぐらいまでスケールしていきました。

福田:40倍? すごいな。

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