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中国のテック事情~飲食店編

中国テックビジネスのスペシャリストに聞くAI+アナログの最適解とは?(前編)   Talked.jp

成嶋:あと500戸ぐらいのマンションだと、1階にウォーターサーバーの自販機があるので、ボトル2~3個くらいを持ってきて、そこで自分でつぐんですよ。日本でもウォーターサーバー用のお水って結構しますけど、それはほとんど運送費なんですよね。そこを改善して、お水をタンカーで1ヶ月分くらいいっぺんに運んで、それをみんなが汲みに行く。マンション住民全員が入ることで60~70%オフくらいになり、共益費に組み込むようにできるんです。で、福田さんのご著書を読んで、私がこれ近いなと思ったのは、だいたい500戸ぐらい超えるマンションは、そのうち3フロアぐらいがお店なんですよ。ストリートです。

福田:そうですね。

成嶋:マンションの中でお店をやると安く出店できますが、サービスが悪いとそのお店は潰れちゃうんですね。なので、マッサージ店とかごはん屋とか、すごくサービスよくやってくれますね。それを見ていておもしろかったのが、1階には大体コンビニがあるんですけど、もし私が夜に「アイス食べたいな」と思ったとき、買いに行くのはちょっと面倒くさいじゃないですか。そうすると「持ってきて」というサービスがあるんです。ウーバーみたいに住人がエントリーしていて、持ってくるんですけど、だいたい子どもがエントリーしているんです。

福田:いい循環ですね。

成嶋:結構な確率でおじいちゃんおばあちゃんがオーダーするんですよ。で、ギフティングもあるから仲よくなって、寂しくなくなる。「おばあちゃん、大丈夫?」って様子を見にくるようになっているんですね。

福田:ICTをベースに、コミュニティーを作っている、と。

成嶋:そうです。そこが、私が中国にとても興味があるところなんですよね。あと、ライフワークになるかなと思っているのは、アナリティクスが動かしている会社が多い点です。例えば私が行った中華料理屋さんでは、テーブルでご飯を頼むと、QRコードをスマホで読んでメニューで注文するんですけど、サーブするパートのおばちゃんみたいな人もそれを読んでいるんですよ。そうすると、私と、このテーブルサーブをしている人が紐づく。お互い、違うアプリを使ってQRコードを読んでいるんです。それで注文するじゃないですか。そうするとそのおばちゃんが全部、受けているんですよ。それで、注文を持ってくるとき、よくシェフもやってきて、「今日の料理はどうですか?」と聞いてきたりするじゃないですか。同じようにおばちゃんも聞いてくるんですよ。「これどう?」とか。で、結構しつこく聞いてきて、「どれが一番おいしい?」「ちょっと頑張ったほうがいいのはどれ?」「これはまた食べたいと思う?」みたいな

福田:頼んだものですよね、それ。

成嶋:頼んだものです。さらに頼んでいないお茶とか持ってきて「どう?」とまた聞いてくるんですよ。で、知らない料理も2品ぐらい出てきて、「これ好きって言っていたから、こっちも好きだと思って」「ほかのお客さんが頼んだから、大目に作ってもらって持ってきた」って言うんですよ。ああ、ちょっとおもしろいなと思っていたら、「WeChat交換しましょ」と言われたので、交換して仲よくなったんですね。そしたらあとから教えてもらってわかったのは、私はその店は初めてだったので、新規アカウントなんですけど、「新規アカウントの客は平均でいくら頼むか」と、そこに利益が計算されていて、おばちゃんには利益ベースで賃金が出ているんですよ。売価は関係なくて利益ベースで。それで、例えば私が3回くらいその店に行っていると、1回目、2回目にいくら使って、何分滞在したかとかも、全部出ているんです。食べさせて、それが気に入ったり、過去の経験からどういう方法のほうが利益が上がるのかということを理解していて、そのステータスによってルールでいくらまでサービスしていいというのがあるんですね。で、それをベースとして自分たちで考えてやっていて、実際はパートだと思っていたおばちゃんは独立事業主だったんですよ。これすごくないですか。

福田:おばちゃんはアフィリエーター?

成嶋:いや、独立事業主とか……。エントリーしている感じになっているので、雇われてはいない感じですね。「今日、5人働いていいよ」となったら、エントリーして、連続で働くとポイントがあったり。あと空いている日は高いオファーが出るようになっているんですね。

福田:ダイナミックプライシング……。

成嶋:それが、裏側で行われているんですよ。それで、そのデータを見て、こうしたほうがいいでしょと、おばちゃんでも若い人でも、普通に社長と戦えるんです。「この場合は、こうだからこうしたほうがいいと思う」という感じで。

福田:「このレシピどうなの?」とか「マーケットが違うんじゃない?」とか。

成嶋:そうです。あとおもしろかったのが、私がその店でお金を払うじゃないですか。でも、お金は一旦、このおばちゃんに行くんですよ。もしくはおばちゃんに払うんです。そうすると、このおばちゃんから会社に行くんです。さっきの注文と抱き合わせになって、ピュッって飛んで行くんですね。で、そこからその場で、おばちゃんに取り分がフィードバックされているんですよ。それが一回一回できているんですけど、そのときに大事なことは、おばちゃんの賃金はお客である私からお金をもらっているんです。なので、お金をもらえる主は会社ではなく、お客様に向いているんですよね。 でも日本だと、おばちゃんは会社からお金をもらうので、会社に従うようになる。お客様を喜ばせて多く使うと賃金が増えるけれど、会社を喜ばしても賃金は増えないことを直感的に理解させる。そこの紐づけもすごいなと。

福田:それ、よく考えましたね、経営側が。

成嶋:めちゃくちゃ上手だと思います。

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