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コンテンツプロデュースの秘訣教えます Talked.jp by Sony Digital Entertainment

真木「失敗を恐れて何もやらないのは、相撲の全休と同じ」
福田「海外との交渉には“断るチカラ”が必要」

福田:新しいメディアという言葉で思い出したんですけど、『やわらか戦車』や『秘密結社鷹の爪』といったウェブアニメが流行った時期に、真木さんは一番早く「ウェブアニメを作りたい」と言って、ものすごく熱心に勉強されていましたよね。やはり新しいメディアや分野への挑戦がお好きなんですか。

真木:やっぱり新しいもの好きかな。おっちょこちょいでもあるけど(笑)。ちょっと面白いことがあると、すぐ「これやろうぜ!」って、パッとやっちゃう。

福田:僕もけっこう新しいことに挑戦しましたけど、8割くらい失敗しましたね。ダメだこりゃって。

真木:でもやらないとさ、わからないじゃない。たぶん今、日本全体がそうなっていると思うんだけど、みんなマイナスを恐れているんですよ。減点法の意識がどこかにあって、怖くて動けない。サラリーマンの場合は失敗したら給料減っちゃうし、飛ばされちゃうかもしれないしさ。だから怖くて何もやらないわけですよ。
でも「何もやらない」っていうのは、決して「プラスマイナスゼロ」とは言えないんです。だってプラスもないから。相撲で言うと全休と同じ。全休だと番付が落ちるけど、あれが当たり前だよね。7勝8敗は1つ負け越しだけど、全休よりいいんだよ。だって7勝しているから。
けれどこういう発想は今の日本社会では極めて少ない。そういうことをしないのに、不思議と大企業は生き延びている。だから製作委員会も搾取の構造じゃないのって言われるんです。

福田:広告代理店が悪く言われるのもそこですよね。自分でモノを作らないで、右から左にメディアを動かして売上を出しているから。

真木:コンテンツってモノづくりでしょ。でも「モノづくりニッポン」なんて言われているわりに、モノづくりの現場の人たちは大事にされてないんだよ。大田区の工場なんかもそうだけど、「モノ作り」が貧乏の代名詞みたいになっている。でもそういう状況を見て、みんな「好きだからやってるんでしょ」って言うわけだよ。そんなわけあるか、バカじゃないのって思うよ。
だからコンテンツプロデューサーは、やっぱりモノづくりをより大事にしないといけないよね。クリエイターを束ねてビジネスをクリエイトしている、モノづくりの代弁者なんだから。昔は作家が出版社に前借りして銀座で呑んでるなんて話があったけど、出版社はけっこう作家を大事にしている。作家がいないと食えないから、新人でも先生って呼ばれる。でも映像の世界はそうじゃなくて、貧乏でも好きでやってるんでしょってなってしまう。監督が印税契約にしてくれって頼んでも「前例がないから無理です」って平気で言ったりする。

福田:そういう意味では『この世界の片隅に』の仕組みはものすごく革新的ですよね。映画がヒットしたら、ヒットした分に応じてクリエイターにちゃんとロイヤリティを支払うスキームを作っている。良いものを作って、それがヒットして、売上をクリエイターに還元して、より良いモノを作るスパイラルができあがるようになっています。

真木:『この世界の片隅に』は良い形にできたけど、でもアニメーションは『鉄腕アトム』の時代から、発注額で作らなきゃいけなかった。売上から原価をはじき出していたから、クリエイターの給料が安いわけですよね。結局、下請けなんだよね。
下請けは考えなくてもいいから、ある意味楽なの。「これやれ」って言われて「ハイ」って言っていればいいんだもの。でもそれじゃ環境は良くならない。自立して、自分で物事を考えて、ジャッジしていかないと。
で、今、アニメにおいては自立する絶好のチャンスが来たんだよ。何が来たかというと、外資ですよ。黒船が来た今が、製作委員会という“非常識な常識”を打ち破る唯一のチャンスかもしれない。彼らも「日本のアニメは安い」と思っているかもしれないけど、自立して価格交渉して「いやいや安くないよ、高いよ」としていかないと。

福田:そういう風に外資の力を利用して、価値を変えていくんですね。

真木:そうそう。1本1,000万円で受けていたのを3,000万円じゃないと受けないよと。そのくらいに突っ張ると、日本だと普通は相手にされず、干されちゃう。でも海外のプレーヤーだと、ちゃんと交渉のテーブルに乗ってもらえる。そのくらい海外資本ってフェアなんだよ。

福田:そうなると、交渉力が日本人のレベルのままだと難しいかもしれませんね。僕も最近海外との交渉が多いですけど、やっぱり断る能力がないと単なる下請になっちゃいますよね。“断るチカラ”をつけることが、自分たちのバリューを上げるために必要っていうのは非常によくわかります。

真木「ユーザーは“方程式”じゃない作品を 求めていたんじゃないかな」

福田:『この世界の片隅に』の製作過程ではクラウドファンディングも活用して資金調達に成功しましたけど、この成功の要因は何だったんでしょうか。

真木:僕らがクラウドファンディングを最初にやったのは、ちょうど2年前(*3)ですね。当時は(国内では)まだクラウドファンディングっていうシステムそのものの認知が今と比べたらはるかに低い状況でした。
クラウドファンディングに一番合っているのは工業製品なんだよね。たとえば「こんなにカッコイイスマホケースを作った。本当は1万円だけど、支援してくれれば5,000円で買えるよ」みたいな。その案件の良い・悪いの価値は、製品や試作品があるから判断しやすい。ところが映画みたいなエンターテイメントには実物がないから、価値がすごくふわっとしている。ふわっとしているがゆえに詐欺と紙一重なわけです。スマホケースなら、一応画像でビジュアルも見られるわけでしょ。そうすると多少イメージが違う製品が来ても飲み込めますよね。でも実物のない価値になると、自分のイメージと違う時に、詐欺じゃないかと思ってしまう。

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