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インドで麻原彰晃と出会う

デザイン経営時代のブランディング 旅だけが ”本当”を教えてくれる ~名物作家の世界放浪記~

福田:鬼塚さんの旅というのは、1988~89年くらいのお話ですよね?

鬼塚:はい。

福田:ってことは、わりと海外旅行ブームでしたよね。LCCこそなかったものの、気軽にサイパンとかハワイとか、海外に行ける幕開けではありましたよね? で、そのときに欧米を目指さず、アジアを目指したっていうのは何だったんでしょう。ロンドンに留学されて、欧米のムードを感じたわけじゃないですか。

鬼塚:そういう感じでしたね。

福田:普通だったらアメリカを見ようかぐらいの感じですよね。

鬼塚:ですよね。でも基本は、「何でも見てやろう」の精神ですからね。船でとりあえず日本を出よう、というのがあって…。ロンドンといっても、実際は結構な田舎で、ちっちゃな街なんですよ。だからもっともっと世界を知ろうと思って。中国からはタイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、ここでしばらく働いて、ニュージーランド、ニューカレドニアに行って、またシンガポールに帰ってきて、マレーシア、タイ、インドと。

福田:すごいですね!

鬼塚:でもタイとインドのギャップはすごかったです。タイ人って仏教徒っていうけども、文化はヒンズーっぽいじゃないですか。それで、タイで踊りを見ていたときに、「次はインドだな」と。踊りを見ながら、「もしかしたらオレは、悟りを開けるかもしれない」と思ってしまったんですね。

福田:仏教へのですね。聖地への道って感じですか?

鬼塚:はい。で、実際にインドに行ったんですよ。その聖地のブッダガヤを目指したんです。育ったのが西本願寺系の幼稚園で、涅槃の仏陀の足元で遊びまわった記憶があるんです。だからどうしても仏陀に触れたかった。カルカッタに着いた瞬間に大雨が降りだし、あっという間に町に水が氾濫して、くるぶしの上ぐらいまでの水が来てたんですよ。直前まで人糞が散乱していたようなところで、もう水が菌の塊のような感じで「うわ、これやべえ!」と思って…。

福田:うんうんうん。

鬼塚:ホテル街に行こうと思ったんですけど、道がまったく分からないし見えない。しかも裸足でサンダルを履いていて、ちょっと足を踏み外してけがをしたんですよ。だからホテルにたどり着いてからそこをずっと洗い続けました。

福田:病気もありますしね。

鬼塚:そう、破傷風になるかもって。「死ぬかな」って半分覚悟しました。それくらい、あふれた水が汚かったから。もう辛かったです。で、それでも絶対に悟りが開けるんだと信じて、仏陀が悟りを開いたという聖地に向かったんですね。そのブッダガヤの中心部の周辺には、国ごとにいろんなお寺があるんですよ。修行する人たちがそのお寺に行って、瞑想とかするんですね。私はずっとビルマ寺に居候して修行をしていたんですけども、ある日、仏陀が悟りを開いたという菩提樹の下に行くと、なんとそこで麻原彰晃が瞑想していたんです。今でもそこに、写真が残っているんですけど。

福田:え!?

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