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麻原彰晃に会いに行った友人

デザイン経営時代のブランディング 旅だけが ”本当”を教えてくれる ~名物作家の世界放浪記~

鬼塚:当時の麻原彰晃はまだ犯罪者ではなく、「空を飛ぶ聖者」みたいな感じの印象でしたね。実際、宗教学者の島田裕巳氏とか、当時はアカデミックなところでいろんな方が注目していたんですよね。

福田:明治大学の教授の中沢新一さんとかですよね。

鬼塚:そうです。私も空を飛ぶっていうのは信じなかったけれど、サンスクリット語を読めるとか信じたんですよ。

福田:ええ。

鬼塚:ブッダが悟りを開いた菩提樹というのがあって、その下に麻原彰晃が瞑想していたんです。そのまわりを踊り組の少女たちが踊っているんですけど、ファンタジーな雰囲気でした。私は「麻原彰晃だ」と思ったんですけど。で、そのときにたまたまビルマ寺の高僧が同行していて。麻原彰晃を前にして、どういう人物か既知のはずがないのに、見た瞬間「うわぁ、この人、すごいマインドパワーを感じる」って言ったんですよ。

福田:いい使い方か、悪い使い方かは別にして…。でもそんな秘境巡りの旅で、日本人に会うのも珍しいわけですよね?

 

鬼塚:そのビルマ寺にはもう1人日本人がいました。私と彼と2人でビルマ寺で修行していて、麻原彰晃がいたとき、その彼もたまたまいたんです。で、夜になってその彼は興奮冷めやらず、「麻原彰晃に今から会いに行こう」って言い出しまして。

福田:えぇ~。それでどうしたんですか。

鬼塚:そのブッダガヤというのは、そんな小さな街なんです。だから日本人が泊まっているところってだいたい分かっているので、「あそこに行けば絶対いるから、一緒に行こう」と言われ。でも、インドの夜って暗くて1人じゃ歩けないんですよね。怖いし、治安も悪いし。道もでこぼこなんで、落ちたら終わりなんですよ。

福田:怖い…。

鬼塚:だから1人では行くのは無理。ロウソクをもって2人で歩かないと怖いし。

福田:でもその彼は、次の日の朝まで待てなかったんですね?

鬼塚:そうです。でも、インドは暴漢が多いっていうし、襲われて身ぐるみを剥がされることもあるので、私は行かなかったんです。でも彼は抑えきれずに、会いに行った。で、その日の夜は帰ってこず、朝になっても居ませんでした。そのまま入信したんだと私は今も思っているんです。たぶんあのとき、私も一緒に行ったら今ごろここにいないですね。

福田:それ以後会ってない?

鬼塚:会っていないですね。サリン事件とか、麻原彰晃がらみの事件が報道される度に、彼がいないか見ていました。名前は覚えていないけど顔は覚えていたから。ハラハラドキドキしながら見ていましたけども、それはいわゆる「彼」ではなくて「自分」を投影していたんですね。自分がここにいたのかもしれないって。だから報道はくまなく見ていたんですけど、ついに彼は出てこなかったですね。

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