ブランディングのキーワードは「D2C」
福田:2016年、ソニー・デジタルエンタテインメント時代に「サウスバイ・サウスウエスト」にブースを出して、最新テクノロジーやデジタルマーケティングのプレゼンテーションをして、いろいろクライアントも得たんですけど。もうちょっと時間があれば、発祥であるフィルムとかミュージックとか、そっちをもっと見たかったんですよね。それを見ないまま終わってしまって……。
小林:ええ~!! それはもったいなかったですね。
福田:そうなんですよ。出ているメンバーも良かったんですけど行けなくて。
小林:一番面白いのはミュージックですね、やっぱり。
福田:やっぱり!? そう、気になったんですよね……。でも、それを見ようとすると、ものすごい長時間、あの場所にいなきゃいけませんよね(笑)
小林:そう(笑)。その問題があるんですけどね。
福田:音楽だけで行けばいいですよね。
小林:日中は白人率とスーツ率が高いんですけど、夜は有色人種率とTシャツ率が一気に上がるんですよ。夜、めっちゃファンキーなんですよ。
福田:6th streetでも、ストリートミュージシャンがすごいじゃないですか。
小林:もう、あれだけひしめく多くの店で全然違う音楽やってるし……。こっちでキューバミュージックやっていたかと思うと、隣でハードロックやってる、みたいな。もう、最高に楽しいですよね。基本、知らないミュージシャンがいろいろ出るじゃないですか。そうすると、気になったミュージシャンのYouTubeビデオとかで予習や復習できるので、まったく知らないバンドを積極的に聴きたくなりますね。
福田:いいですね~。
小林:で、ライブを観て、「すごいいいな」と思って、あとでiTunesで買ったり。その後もずっとウォッチしてるミュージシャンもいますね。レコード会社の人たちも、一本釣りに来ていますよね。いわゆる、野球で言うスカウトマンみたいな人たちが。福田:音楽はとくに、ネットのおかげで「メジャーじゃないと売れない」っていうことではどんどんなくなっているから、わかりいいですよね。そういう意味でのエンターテインメントの民主化で言うと、このiPhone11辺りのレベルが高すぎて、かつての映画製作者はみんな、衝撃を受けているでしょうね。でもまだ「iPhoneで撮った」が付くじゃないですか。でもたぶん、今のデジタルシネマのレベルでいったら、付かないで余裕でできますよね。ましてや英語が全くしゃべれない韓国人の監督が、アカデミー賞のスピーチで「マーティン・スコセッシありがとう」なんていう時代にきたわけですからね。
小林:すごいですよね~。
福田:日本映画、頑張れよ……みたいな感じになってきますよね。
小林:そこですよね。アニメーションにしても、わりと世界を席巻できていたけれども……。それを見て育ったジェームス・キャメロンとかジョエル・シルバー、ウォシャウスキー姉弟みたいな人たちもいるけれど、そこでビジネススキームとして回収するのがなかなか難しい。どうしても、「ハリウッドで映画化!」というとすごく成功した印象がありますが、最終的に原作映画名や原作者名をクレジットしてもらえなかったり、フォーマット販売のみになって、ロイヤリティ収入ももらえないみたいな。非常に閉鎖的な商慣習が横行し、タフ・ネゴシエーター揃いかと。日本人としては最初から障壁が高い。
福田:だからやっぱり、Netflixが構造を変えますよね。Netflixって、テレビ局なのか映画会社なのか、さっぱりわからないじゃないですか。劇場で公開してないのに、アカデミー賞では24本もノミネートされて過去最多のスタジオです。ディズニーでさえ20本ですから。だからこれからはおそらく、映画とテレビの区分けはなくなるでしょうね。
小林:まあ、そうですよね。ユーザーからすると、「ジャンルがこれだからこう」っていうのはあまりないですし。今は、D2C (Direct to Consumer)のブランドが流行っているんですよ。「キャスパー」という、ベッドのマットレスを売っているアメリカの会社がありますが、これはオンライン販売だけなんですね。でもすごい人気で、ベルリンのTOAで行う3日連続ハッカソンなどにマットレスを無償提供しています。
福田:へぇ~!
小林 つまり「コンテンツのD2C」がNetflixだと思っているんですけどね。本当は実力あるクリエーターにとっては映画館への配給ベースではない、第二、第三の道があると思います。事実、ハードウェアやソフトウェアでそれが起きています。いまや大手百貨店や商社が取り扱わなくても、グローバルにファンを獲得できる可能性はコスメやアパレルなどのD2Cが示しています。福田:面白いなぁ。まだお聞きしたいことはたくさんありますが、時間切れとなってしまいました。ぜひまた、いろいろ教えてください。
小林:こちらこそ! ありがとうございました。
福田:ありがとうございました。
(了)
(前編へ)