アリババの信用スコアに学ぶこと
國本:そうですね。まず企業にとって、どういうベネフィットがあるのか。要は一人ひとりのデータを取って、その人ごとにリコメンドすることで、そのブランドとして本当に引きつけることができます。それを消費者・利用者のメリットをいかに理解してもらえるか、ですね。
福田:いまだに無駄なメディア媒体を持ちつづけている企業があります。例えば、六本木通りのある場所に「週刊プレイボーイ」の大きな看板が昔からあります。あまりにも昔からあるので、場所利権みたいな考え方なんでしょうけど、そこで売ってる商品が誰にいつどう見られているかなどの人感センサーなどを用いたデータトラッキングは多分行なっていないと思います。
例えば、その看板の視聴率をちゃんと測り、その属性の人たちを看板の場所からAIが溜め込んだデータから抽出し、「この看板近辺の近所にターゲット消費者が1万人居ます」とかできると看板はIoTとなり新しいマーケティングツールにできるかもしれませんよね?
國本:そうですね。理屈上は出来ますが、そこの会社をどこがやるかですよね。
福田: 中国だったら個人情報の許可はいらないから、パッとできると思うんですけど、日本人は「オレの情報勝手に盗られた」ということが起きてしまいます。
國本:そういう問題が、以前某大手人材会社やインターネット広告企業のサービスでも炎上しました。
福田:あぁ。ありましたね。ちゃんと規約でもチェックしていますよね、と。
國本:そういうやりかたを結構しているので、データを取る事に対して、日本は印象が悪くはなってきているのはありますね。「データを取ることによって、あなたにもこんなメリットがありますよ」というのを常に出し続けないと、データって出したくないですよね。中国が、そこがうまいんです。データを取るためのインセンティブ設計ですね。
福田:中国の設計にはどういうものがありますか。
國本:個人に合わせたクーポンが一例ですね。例えば、顔認証でもアリババでは顔をかざすだけで「あなたには20%割引」とか。
福田:なるほど。Netflixのドラマ「ビリオン」の中で、ある銀行をぶっ潰せっていうプロジェクトがあって。白人、黒人、いろんな属性の人たちがローンを借りたいって銀行に行くと、対応している人が、白人にはすぐ貸すのに、黒人には「審査が落ちた」とか言って貸してくれなかったりするんです。その映像を全部出して、「こんなことやってますよ」って、世間に暴露して世間で大問題にし、行政機関から潰させるというストーリーがありました。
國本:アリババグループの芝麻(ジーマ)信用(芝麻信用管理有限公司によって2015年から運営されている信用スコアサービス)などは、まさにその思考です。中国は日本に比べると貧富の差が激しく、銀行口座を作れない人やクレジットカードも作ってない人が少なくないんです。でも個人に信用力がほぼない状態の中でも、ビジネスをやりたい人がいます。だからクレジットスコアをいかに上げて、「私は大丈夫です!」という部分をアピールできるところがニーズと合致したんですね。
福田:その時、ドラマのようなことはあるんですか? たとえば実績のない人が信用スコアを上げていくために近所の人に親切にしているとか。そういうことがどうやって信用スコアに反映されるのか、よく分からないですけど。
國本:アリババの場合、自社のサービスを使ったことによってデータが取れます。たとえば、アリババが作っているFly Zooホテルのレーティングもそうですし、アリババのECでどういう買い物をしているか、どういう買い物の傾向があるのか、金額も含めてです。
日本もデータを持っている企業は多いのですが、そのデータがあらゆる情報と紐づいていません。中国だと、アリババはECも含めて、全ての支払いやサービスのインテグレーション(提携)が出来ています。
更に、タクシー会社やフードデリバリー企業なども出資・データ連携しているところが強いんです。日本はデータが分かれすぎていますよね。
福田:プラットフォームがバラバラですね。例えば、オムニチャネルってありますよね。ネットだけでなく店舗などリアルの場を含めたあらゆるチャネルを連携させてお客さまとの接点を持って売上をアップさせるようなことで成功している企業も中国と比較したら、むちゃくちゃ少ないです。リアルを重視しすぎて、ネットを追随メディアと捉えているからじゃないでしょうか。