新卒入社時の目標は「寿退社」
福田:山﨑さんは元々バンカーになりたいと思っておられたのですか?
山﨑:全く。そもそも、働く気が全然なかったんですよ。ちょっと仕事をして寿退社をするというのが理想というか、既定路線だったというか。私の母は「女性たるもの、こうであるべき」という強い信念があって。まさに、夫を献身的に支えて出世させる「内助の功」の見本のような感じの母親です。父の靴下は母が履かせるという日常でした。そして、時代もあったと思いますが、父も猛烈なサラリーマンで、ほぼ家にはいませんでした。
福田:すごい。
山﨑:すごいですよね!ただ、父と母の関係が封建社会的な嫌な感じでしたら、私も反発していたと思うんです。でも、ものすごく仲が良かった。父が、そんな母をちゃんと敬っていることが、子どもながらにもよくわかっていました。
福田:いいコンビだったんですね。
山﨑:はい。いいコンビでした。父はなんでも「やって?」って母にやってもらう。実際に何もできないんです。インスタントの焼きそばに、ソースを入れてからお湯入れて、「ぎゃ?真っ黒になっちゃった! どうしたらいい?」みたいな(笑)。一人では本当に何もできない父でした(笑)。
そんなふたりを見ていて、女性は男の人のちょっと後ろに下がってサポートするのがよいと思って育ってしまったんですね。だから父のように、相手をちゃんと尊敬してくれる素敵な人を見つけて、お嫁さんになって、良妻賢母になろうと(笑)。
福田:それはいつ頃までですか? 大学生ぐらい?
山﨑:いやいやいや。29くらいまで。
福田:29まで!
山﨑:寿退社を目指していたので、花嫁修業も一通りやりましたし、「いつでも行けますよ、私!」みたい感じだったんです。とはいえ、相手に求める水準は高くなるばかりで、直前までくると……
福田:この人じゃ靴下を履かせられない(笑)
山﨑:そうなんです! 子どもの頃から、ずっとその価値観できてしまいましたからね。それで仕方がないので、目の前にある仕事を一生懸命にやっていたら、いつの間にかポジションが少しずつ上がっていったという感じです。