世の中を変えるのって面白い!
福田:出だしから、衝撃的なデータのお話でした。「メディアとエンタメとアートが自身の背景にある」と先程おっしゃっていましたが、ところでリオさんって、もともとは何を生業としているんですか? 僕の「プロデューサー」という紹介は、間違いではない?
コミンズ:はい。基本的には、企画をやっている人間なので。でも、この5年はほとんどクライアントワークはやってはいないですね。「こんなことをやりたいな」「こういうプロジェクトもやりたいな」と思って企画したら、幸運なことに「それ面白いじゃないか」って人が集まってくる。だからプロデューサーということで合っています。アイデアに人とお金が集まってきてくれているので、どうにか飯を食ってる感じです。自分のことを自分ではシンプルに、「企画屋」と呼んでいますけども。
福田:そんなアイデアのひとつで生まれたのが、アートやメディア、エンタテインメントの力を使って、社会課題解決へ取り組む会社ということですね。素晴らしいな。リオさんの会社SEAMESは、NPOではなく株式会社ですか?
コミンズ:はい株式会社です。なぜNPOではなく株式会社にしたのかというと、やっぱりスケーラビリティ(拡張性)ですね。個人的な意見ですけども、NPOには限界があるように思えたんです。もちろん、「国境なき医師団」とか、UNICEFみたいな巨大なNPOや非営利組織もありますけれど、基本的には株式会社のほうが、いろんなセクターの人がお金を入れやすくなると考えました。NPOにお金を入れるって言うと、どうしても寄付というかたちになるので。
福田:ベンチャーキャピタルなども視野に入れずに?
コミンズ:そうですね。スケールという意味では、ユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業)を狙っているわけじゃないので。でも例えば100億円を売り上げる企業の社長が、ソーシャルセクターを運営していたら、影響力は出るとは思います。高校生の憧れの人物像のワンオプションとして、ときどき冗談で言うんですけど、日本で一番すごいNPOをやっている人と人気女優が結婚してくれたら一番嬉しい、本当は(笑)。そうすれば「え? 世の中を良くして、女優とも結婚できるなんてカッコいいな」みたいになるから。ちょっとミーハーなたとえではありますけども。
福田:でも、分かりやすいよね。
コミンズ:そう。僕はそういう、分かりやすい例をどんどん作っていきたいんです。「世の中を変えるのって面白いじゃん!」っていう。社会貢献のイメージというと、代表例としてマザーテレサなどもそうなんですが、“滅私”なんですよね。例えば、「港区に住んでいるお前が、月収14万円以下のシングルマザーの気持ちが分かるの?」というような発言はあると思うんですけど、そこは問題じゃないと思っていて。人間は共感(エンパシー)の生き物ですし、貧困層の解決と、自分の環境はまた別の話で、「結局、自分には何ができるか」じゃないですか。これもよく冗談で言っていることなんですけど、「4000万円出してランボルギーニに乗れるんだったら、8000万円は余裕で出せますよね? だから4000万円は寄付してください」みたいな。そうすると、ランボルギーニに乗っている人って、全員4000万円を寄付した人間になるわけですよ。「一年のランボルギーニの販売数 ×4000万円で、それで何人救える?」という。つまり、見え方をどう変えるか、なんです。世の中をどうやって変えるかというイメージなので、やっぱり株式会社のほうがいいのかなと思っています。
福田:分かりやすいですね。非常に理路整然としている。僕は芸能事務所もやっているのですが、ITが世の中に出る以前は、芸能人がITの人と付き合って結婚、なんて潮流はもちろんなかったわけですよ。だから、リオさんの考えはよくわかる。
コミンズ:あぁ、通ずるところありますね。めちゃくちゃいい例ですね!