『ホームレス支援の新しいカタチ~誰にでもやり直せる権利がある』 ホームレス支援団体『Homedoor』川口加奈氏×実業家 福田淳の対談

ホームレス脱出のための選択肢を与えたい

福田:『Homedoor』設立から現在、170人に就労機会を与えたというのは、すごいですよね。その突破口となった『HUBchari』(ハブチャリ)というシェアサイクルのしくみについて、ご存じない方もおられると思うので、川口さんから簡単に説明していただけますか?

川口:「HUBchari」は、大阪市内の各所に設けられた「レンタルサイクルポート」にある共有の自転車を、有料レンタルできるサービスです。「HUBchariのポートであれば、どこに返してもいいので、乗り捨てや駅周辺の放置自転車問題を解決策できるようになる。また、自転車修理などの仕事によって、生活保護を受けているおっちゃんたちへの、次の仕事に就くまでの中間的就労支援提供にもつながります。

福田:ホームレスを脱出した方のほとんどは、この『HUBchari』で就労機会を得たんですか。

川口:HUBchariを中心に事業をはじめ、『HUBchari』から派生した、ビニール傘のリメイク『HUBgasa』(ハブガサ)や企業や行政からの委託による仕事での就労機会を提供してきました。行政からの委託では、放置自転車対策として、街中の放置自転車の整理や駐輪場の案内をしています。

福田:今、「全国で7000〜8000人弱のホームレスがいる」と言われていますけれど、実際は昼間、多少バイト的なことをして、夜はネットカフェで寝泊まりしている人もいますよね。そうすると、もっと実感としては数が多いんじゃないかと思うんですが。

川口:そうですね。実際は、3倍ぐらい多いのでは、といわれていますね。

福田:ということは、単純計算で3倍として、2万4000人のホームレスの人に対してすべて就労機会を提供するしくみができたら、『Homedoor』の目的は一応達成、ですか?

川口:そこが難しいなと感じていますね。私は、「ホームレスの人をゼロにしたい」「ネットカフェ難民をゼロにしたい」というよりは、おっちゃんたちが路上生活から脱出したいと思ったときに、脱出できる多種多様な選択肢を提供したいなと思っているんです。あんな方法もあるし、こんな方法もあるよっていう。ただそのことを、具体的な数字で目標にするのは難しいですね。数字というよりも、ホームレスの人たちにとっての、灯台的な存在でありたいんです。「Homedoor、あそこに行けば何とかなる」というような。

福田:川口さんが、「おっちゃんたちに選択肢を与えたい」という思いの源は何でしょうか。

川口:路上生活から脱出するには、「生活保護を利用する」という選択肢しか今はない状態なんです。でも、「生活保護を利用したくない」もしくは「利用できない」というホームレスの方も決して少なくはなくて。