【ニューメディアが拓く面白人生!】8ミリ映画から衛星放送、iモード、スマホアプリまで。ニューメディアの可能性を広げるのが醍醐味。@慶應義塾大学 メディアコミュニケーション研究所【中編】

13.「あなたにとってのセレブは誰?」
1位から5位までがYouTuber

映像の仕事も観光庁のプロジェクトをはじめ、いろいろ手がけています。テレビCMの15秒や30秒だけでは体験とか喜びを充分に伝えにくいというクライアントさんの要望で、『ドラえもん』のキャンペーンでは、YouTubeを使って2、3分のコマーシャルを制作しました。HIKAKINさんを起用したのですが、ご存知ですか? 今、テレビに出ていなくてもソーシャルメディアの中で有名な「ソーシャルスター」がポツポツ現れてます。InstagrammerとかYouTuberとか呼ばれて、大人気なんです。2、3年前、GoogleがCMでいろんなYouTuber使ったあたりから、注目されるようになりました。制作側の理屈だと、テレビの方がはるかに歴史があり、仕掛けも大きくてお金かかっているのですが、見る側からすれば、40インチのテレビ画面だろうが、5インチのスマホだろうが、視聴に費やす時間は同じなので、より長く接触しているメディアからスターが出てくるのは当然なわけです。例えば、マックスむらいさんには140万人ぐらいの登録者がいます。HIKAKINさんに至っては500万人を超えていますよね。

小学生に「何になりたい?」と聞くと、憧れの存在としてよく名前が挙がります。アメリカはもっと進んでいて、ティーン1500人に「あなたにとってのセレブは誰ですか」と聞いたところ、なんと1位から5位までがYouTuberで、6位にようやくポール・ウォーカーというハリウッド俳優が挙がりました。ただし、この人、交通事故で亡くなっているんです。実在する人物のトップが死人だったということで、みんなで驚いたんですけど、それぐらい、今、YouTuberの存在感の方が際立っています。

14.ギャラリーまで足を運ばなくても、スマホVR経由でアート作品を見られるように!

また当社ではコンテンポラリーアートにも力を入れていて、8月にはバーチャルリアリティー専門のアートギャラリー「VR GALLERY」を阿佐ヶ谷にオープンします。最近Googleがバーチャルリアリティーの絵が描ける「Tilt Brush」というブラシを開発したのですが、これを自由に使えるスペースを実験的に作ってみました。世界中のクリエイターが作ったバーチャルリアリティーのアート作品も、ヘッドセットを付けて見ることができます。ただヘッドセットって重いし、ちょっと手離れが悪いので、この秋からは、スマホでそのまま見られる「スマホVR」も提案する予定です。これが実現すれば、ギャラリーまで足を運ばなくても、スマホVR経由でアート作品を見られるようになります。

VRとかホログラムとか、立体表現はどんどん進化して、リッチになっています。昔は「こういうおいしい店があるよ」って文章で発信していたのが、いつしかInstagramなど写真で紹介するようになって、今ではムービーでSnapchat送る人もいますよね。皆さんの中でSnapchat、ダウンロードしたことある方っています? あ、結構いらっしゃいますね。他にもSNOWとかeggとかありますよね。「フェイススワッピング」と言って、スマホで自撮りしたときにカメラが目と口をパッと認識して、わんちゃんになったり、いろんな変身ができるんです。自撮りの進化形というか、僕は「自撮りのデコメ化」って呼んでいるのですが、ローラのInstagramがきっかけで、爆発的な人気となっています。他にも、例えばシャネルの化粧売り場にはiPadが置いてあって、スイッチを入れると瞬間的にメイクしたときの自分を非常に美しいクリエイティブで見せてくれたりします。才能あるクリエイターが新しい表現手段を積極的に取り入れて、次々とユニークなアイデアを形にしているんですね。インタラクティグ広告の可能性がどんどん広がっています。

15.「Google検索で知った」が2%しかない記事も!
大半はFacebookとかTwitterなど、ソーシャルメディアから

時代によって接触デバイスは猛スピードで変化しています。冒頭でお話しした通り、僕が『スター・ウォーズ』見て映画監督になりたいと思った頃の画面サイズって800インチ程度、70ミリフィルムの場合はそれ以上に大きかったんです。それが今やスマホの5、6インチ程度まで小さくなっている。ここまで端末の画面が小さくなると、さすがに家族で一緒にスマホの画面を見るわけにいかないので、最近は自分だけのデバイスで見たいものを見たいだけ見るのが主流です。ちょっと資料が古くでも恐縮ですが、2004年の統計によると、スマホの利用時間が10年間で5.3倍まで増えています。先日、10歳の男の子がスマホ見ながらホームに落ちちゃう事故がありましたが、電脳の世界に入り込み過ぎて、現実を生きている感覚が欠落してしまっている。それくらい皆さん、スマホに熱中していますよね。

もう一つ注目していただきたいのが、スマホの利用時間の7割をソーシャルメディアに費やしていること。今、面白い記事が出回ると、僕たちプロは「皆さん、この記事どうやって知ったんですか?」とトラッキングして調べるんですね。そうすると、「Googleで検索した」という割合が2%しかない記事もあったりするんです。大半はFacebookとかTwitterなど、ソーシャルメディアからその記事にたどり着いている。一昔前、まだパソコンが主流だった頃は、「あのカレー屋さん行こう」とか、「今度みんなで伊豆を旅行しよう」といったときに、まず検索してたんですね。ところが、最近は、Q&AサイトとかLINEの友達に、「近所にカレーおいしい店ない?」とか「伊豆でいい宿ない?」と聞く。Googleの検索に全く引っかからないネット活動が爆発的に増えているんです。