もうテレビは飽きた。デジタルをやりたい
僕、子どもの頃から映画大好きで、12歳のときに『スター・ウォーズ』見て、将来は映画監督になろうって決めたんですね。当時はまだビデオはなく8ミリの時代だったので、フィルムを買いまして、淀川の堤防掘りで撮ったりしてたんです。大学も、森田芳光さんとか、長崎俊一さんとか、8ミリ出身の映画監督を多く出していた日大芸術学部に入ったのですが、映画学科には落ちまして、ジャーナリズムコースに進みました。そのあたりから映画監督を目指す道から少しずつ離れ始め、卒業後は東北新社という制作会社に入社し、CM部に配属になりました。120人ぐらい新入社員入ったんですが、まあまあ花形だったんですよ。僕はコカ・コーラ担当で、『I feel Coke』のCMでパシリやってました。川原亜矢子ちゃんとか、鶴田真由ちゃんとか、コカ・コーラ出身のモデルさんから女優さんになった方も多くいるんですよ。
しばらくたったら、東北新社の社長が「テレビ局つくるんだ」と言い出して、スターチャンネルを始めたんです。私がなぜか衛星放送の営業部長に移動になりまして、カンヌ、ハリウッド、世界中連れて行ってもらうんですけど、それもつかの間、会社と喧嘩してクビになりまして、2年間仕事がなかったんですよ。
ところが、人生わかんないもんですね、ハリウッドの映画会社が「おまえを雇ってやろう」と言ってくれて、33歳のときにソニー・ピクチャーズエンタテインメントに拾われました。2007年に「もうテレビの世界は飽きた。デジタルをやりたい」と訴えたところ、ハリウッドの本社から、「おまえはハリウッド映画よりも、日本のアニメとかキャラクターばかり売ってるから、もういらない」と言われまして、「じゃあ、辞めますわ」って今の会社を創ったのです。
クリエイティブで人助けがしたい
ソニー・デジタルエンタテインメントはどんな会社かって言いますと、『Social Design Company』と呼んでいます。最近はチャットアプリ「LINE」関連のコンテンツ開発に力を入れておりまして、企業ブランドの取り扱いはトップシェアと思います。有料コンテンツだと、『ぼのぼの』とか、『こびとづかん』とか、もしかしたら、皆さんが持ってるのもあるかもしれません。この3年間で1億人以上のお友だちを獲得しました。この数はソーシャルマーケティングの会社としても、フレンド獲得数で世界ナンバーワンだと思います。
僕はエンタメ業界で30年やってますので、ハリウッドとか日本のアニメ、今だったらアジアのクリエーティブハウスなど幅広くお付き合いがあります。当社のクライアントはP&Gとかポーラ・オルビス、ユニクロ、ハウス、不二家、キリン、アウディなどのグローバル企業が多いです。最近だと、チョコレートを買うとペコちゃんのスタンプがもらえたり、ハウスの「とんがりコーン」買うとラスカルがもらえたり、そんなキャンペーンを仕掛けたりしています。
その他にも、インスタグラム活用したインフルエンサーマーケティングや交通広告、今、ビームス ジャパンの新宿店のスモールプロジェクション・マッピングも当社がやってますね。あと、サトルジャパン所属のテイラーと一緒にグリコのYouTubeを制作したり、僕、アートが好きなんで、現代アートのイベントも手掛けています。現在は西畠清順って、人気のプラントハンターの「ウルトラ植物博覧会」を銀座のポーラミュージアムで9月25日まで、僕がプロデュースしてやっています。無料ですから、ぜひ来てください。
実は僕自身、お金もうけにはあんまり関心がないのです。いろんなクリエイティブで人助けがしたい。例えば、NPOの支援を新しいデザインの観点でお手伝いできないかと考え、ファザリングジャパンとか、ホームドア、テーブル・フォー・ツー、タイガーマスク基金などのマーケティングの一部を手がけてます。
自分自身が一つのメディアになってしまえ
さて、具体的にどうソーシャルメディアを使いこなせばいいのかノウハウをお話しする前に、今、世の中がどうなってるか、ざっとお話ししたいと思います。こちら、一昨年なんですけど、アメリカのティーン雑誌が13歳から19歳、約1500人に「あなたにとってのスターは誰だ」って調査したんですね。そしたら、なんと上位5位までがYouTuberだったんです。6位のポール・ウォーカーは俳優ですが、既に死んどる。7位のジェニファー・ローレンスでようやく“生きている”映画スターが出てきます。つまり、もうテレビや映画も、スマホの画面も、お客さんにとっては同等な価値があるんですね。僕なんか古いんで、やっぱりテレビや映画に出ている人をすごいと思ってしまうのですが、最近の『ポケモンGO』のブームなんか見てると、みんな、スマホの画面ばっかり見てるわけですね。そうすると、HIKAKINって日本最大のYouTuberの名前が、「憧れの人」として小学生の口から出てくるのも頷けます。皆さんが今、どれくらいのレベルでSNSを使いこなしているのかわかりませんが、ソーシャルスターという存在を突き詰めてみるのも面白いかもしれません。自分自身が一つのメディアになってしまえば、「何かモデルさんの仕事ください」って頼む状態から、「やってあげてもいいよ」と頼まれる立場に昇格する可能性もあるのです。