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説明しすぎないバラエティでありたい

テレビはオトナのたしなみ!という提案。 Talked.jp

角田:『オトナの!』も、『オトナに!』も、かっこいい大人しか出ないというコンセプトなんですけど、今度は逆に、そのかっこよさについてはいちいち教えないほうがいいなと思って。ただそのまま、その人の等身大を話してもらう。以前、岡村靖幸さんに出演していただいたんですが、僕が大ファンで、5年ぐらい交渉してやっと出てくれたんですよ。トーク番組なんて出ない方なので。

福田:5年はすごいですね。

角田:でも、若い演出家はあまり知らないから、岡村靖幸さんっていう人をナレーションで語ろうとするわけですよ。こういう人で、こういうヒット曲があって、こんな曲を書いてって。それがかえって、もうかっこ悪くなっていて、「ふざけるな」と。「おまえに岡村靖幸を語る権利はない!」って部下に言ったんです。「じゃあどうすればいいんですか」っていうので、「ただ流せ」と。岡村靖幸とは何者なのか、なんていうことは語らなくていいから。ただ流していれば、視聴者には分かるからと。

福田:つまり、プロフィールはいらない。素晴らしいアーティストなんだから、ただ流すだけでにじみ出るものがあるということですね。

角田:はい。本当にすごい人は、そのままオンエアすれば、あとでみんな検索するでしょうと。それを今までテレビって、いちいち全部説明するみたいなところがあったんですよね。福田さんの著書にもありましたけども、検索した情報が正しいか正しくないかを判断するのは、その人の知性の問題。「おまえがそう思えばいいじゃないか」っていう、その知性だけが大事じゃないですか。

知識から知性の時代に変わってきて、今までは検索能力が高い人を頭がいいとしていましたよね。だから大学の卒論も、圧倒的にすごい学説を書くことじゃなく、その学説をどれだけ裏付ける情報を検索して引用できたかで、「優良可」が決まると。ところが今は検索っていっても、スマホですぐできちゃいますよね。
だからテレビも、かっこいい人からにじみ出たものを番組で観たら、あとは自分の知性でどう感じるか。感じない人は、もういいと思う。僕はぶっちゃけ、そこはシカトでもいいと思っているんです。何かを感じた人が「この前の岡村靖幸、超すごかったんだけど」ってつぶやいたことが、拡散してくわけじゃないですか。

福田:うん、仰ること、よくわかります。

角田:たとえば『CUT』のようなインタビュー誌があるじゃないですか。そこで巻頭8ページで載っていたら、自分が知らないアーティストでも、「この人、きっとすげえ今イチオシなんだな」と思うじゃないですか。なのに「今イチオシの◯◯さん!」なんて書いてあったら、ダサいしカッコ悪い(笑)。なのに、そういうことをテレビはずっとやっているんですよね。

福田:僕は、三島由紀夫の小説を中学生くらいに読んだんですよ。面白いんですけど、むっちゃくちゃ漢字が難しくて。「いさかいめ」とか、平仮名で見ても全然分かんなくて。で、後日三島由紀夫のコラムを読んだら、「分からない漢字は漢和辞典で調べるぐらいじゃないとダメ」と。そんな解説なくたって、分かんなきゃ調べるし、場合によってはリズムで乗り越えるしかないですよね。英語だって難しい単語を乗り越えて覚えていくわけですから。だから、感性は磨かれますよね。

角田:たしかに、そうすることで推測力は身につきますよね。「いさかいめって、なんとなくこういう意味なんだろうなぁ」みたいな。

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