僕たちが買っているのは 「アート」という時間
福田:バブル時代にある製紙会社のオーナーがゴッホの『ひまわり』を買ったときに、「死んだら一緒に入れて焼いてくれ」と言って世間から非難を浴びたことがありました。それと同じですね。だからアートというのは、時間の一部かもしれません。僕らは、アートを買うことで「時間を買っている」。物という空間ではなくて、時間を買っているという、そのバリューでしょうね。そうでなければ、年齢を重ねた人ほどギャラも高くなるっていう構図、あるわけないですよね。テクニックだけだったら、スキルのある若い人だっていっぱいいるわけじゃないですか。だけど、年齢のいった方のほうがギャラも高いっていうのは、時間に対する評価なんだと思います。
施井:なるほど。アート作品にはもともとそういうところがあるという話ですね。 それは面白いですよね 。
福田:施井さんは、経営とアート活動の時間配分って、どうされているんですか。
施井:ここ1年は100パーセント経営というか、会社のことをやっていますけど。でも一昨年は、5回ぐらい展示をしました。でも配分っていう感覚はないですね。
福田:でも、「ここからはちょっとアートやるよ」っていう感じで、スイッチを替えないと切り替わらないというのはないんでしょうか。
施井:僕、少し前に内閣府のロゴを作ったんですよ。そういうふうに未だにいろいろな依頼をいただくので、切り替えはよく分からないというか、あまり考えていないですね。ちょうど今、起業5年目ですけど、最初の3?4年は受託もやっていて、ウェブ作ったり店舗デザインをしたり。もちろんアウトプットによってプロセスも変わりますが、依頼者と依頼内容、アウトプットや目的あたりが変数になって変わっていくだけなので、使う脳みそは一緒のものですね。
福田:なるほど。たとえばアートとして依頼があったとき、お金の話とかは突っ込んでされるタイプですか。
施井:もともとは全然できなかったですよね。起業するまでは全然できなかった。でも起業してよかったことは、お金を請求できる理由ができたことですね。一人の場合は、「お前の仕事は、一日働いたその日給以上のものか」って分かりやすいじゃないですか。でも会社はさらに、背後にいっぱい人や物を背負っているから、お金の話も言いやすくなるところはありますよね。
福田:だから、さっきの時間の話なんですよね。僕はブランド・コンサルタントを初めてまだ1年くらいなので、偉そうに聞こえるかもしれませんが、まあまあ成功しています。お金の交渉がむちゃくちゃうまいからなんです(笑)
施井:ぜひ、いろいろお願いしたいですね。
福田:僕のほうも、ご相談したいです。僕が今の会社でプロデュースしているアーティストが何人かいるので、彼らの作品の登録や作品証明について、ぜひご教示ください。デジタルアートも、そのものにブロックチェーンを埋め込んで管理できるようになれば、素晴らしいですよね。ブロックチェーンというテクノロジーが入ることで、基本的には、ねつ造できないですし、未来永劫その価値は証明されてくっていうのはすごいなと思って。
施井:もちろん、デジタルアートもやっていきます。
福田:すごいことです。
施井:それこそ、これから一番伸びる部分なんじゃないでしょうか。アンディ・ウォーホルとかも、当時はインクジェットプリンターばりの気持ちでシルクスクリーンを使っていたそうですし。今最先端はデジタルアートですよね。でも複製できちゃうから今まではなかなか価値をつけられなかった。そこはブロックチェーンとすごい親和性があるので。
福田:そういうものを普及させるための、時代のトリックスターが求められますね。
施井:そうなんですよね。
福田:今日は楽しかったです。また、ぜひ。ありがとうございました。
施井:ありがとうございました。こちらこそ、またぜひ。
(了)
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