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サラリーマン以外にも社会はある

発想の原点は、「構造を見る」ということ  Talked.jp

福田:メンバーシップ型のループから抜けようと思う人は、MBAを取ったり英語を勉強したりして、外資へ入れば給料は上がりますね。能力がないと、シンプルにクビになるけど、そういう層が極端に少ないんですよね。ただ、だんだん知恵が付いてくると、みんな辞める前提でサラリーマンになる。「ボーナスよりも退職金のほうが税金が少ないしいいね」とか言って。だけど、60歳をすぎたころからオファーがなくなるわけですよ。そのループから外されちゃうと、何の保証もない。じゃあ、そこでどうすればいいのか。 考えてみたら、第三極があるのですよ。それは、スーパーサラリーマンや外資系企業に行って短期で稼ぐ人以外にも、「フリーランスで生きていける」という方法です。でも、これについてはほとんど言及されていないし、存在が見えにくいですよね。だから、「今の会社を辞めたら崖っぷちで闇だぞ」というイメージがついている。僕が20年いたソニーを退社した時、周りにはアーティストを含めてフリーランスが多いので、「辞めた」と言ってもみんなから「ああ、そうですか」「ご苦労様です」という反応で、最初はそれにびっくりしました。「辞めた」なんて、すごいことを自分はしたんだと思っていたのに、「よかったですね」「これからはもっと自由にやるんでしょ。どうせ」って(笑) 拍子抜けしたと同時に企業洗脳が解けました。

白河:周りの人が多様だったからですね。

福田:僕は「20年も勤めた会社を辞めて」という感じだったんですが。

白河:「福田さん、これからどうするんですか?」と、心配されるような反応が来ると思われたんですね。

福田:ええ。でもそんな反応はゼロで、誰も心配してくれなかった(笑)。サラリーマンをずっとやってきた知り合いが、出世争いに破れ鬱になって会社を辞めたんですよ。で、僕がロサンゼルスに行くときに「一緒に行ってもいいですか?」と聞かれたから「おう、おいでよ」と。僕は毎日のようにバーベキューとかプールパーティをやっていたので、彼も呼んで。そこで現地の人に「あなたは何の仕事やっているの?」と聞かれて、「いま無職だよ」と教えると、「やったな。イェーイ!」って。そんなことを言われたものだから、彼も「会社辞めていいんだな…」と。会社を辞めたことに罪悪感を持っていたのだけど、それは日本の中だけの話しで、ロスは、人材流動性の高い社会なので、みんな「おめでとう、おめでとう」と言われます。

白河:すっかり元気になった。

福田:そうです(笑)。「辞めていいんだ」となって。「そうなんだよ。僕は先んじて辞めてたわけですけど、世の中はサラリーマン以外にも社会ってあるらしいよ」と言うと、「やっと分かりました」と、元気になって帰っていきました。だから僕も、そういうことに気が付いたのは50歳を過ぎてからですよ。

白河:まさに、パラダイムシフトですよね。

福田:自分はパラダイムシフトが遅かったんですよ。(前職では)ソニーデジタル・エンターテインメントという会社を経営していたので、好きにやらせていただいていたから余計気づかなかった。

白河:そうすると、福田さんは50代からのスタートアップということですね。

福田:はい。しかも、すべて自己資金で創業して、資本金いまでも1万円ですよ。銀行からの借り入れゼロです。

白河:すごいですね。自己資金スタートアップって、あんまり聞いたことがないです。お金の余っている投資家がいきなり訪ねてきて、「あなたに投資させてください」みたいなことはなかったのですか?

福田:たくさんありました。でも、長年”会社”を商品としてM&Aしていた経験から、会社は株主のものなんですよ。一番は株主で、社長のものでも、社員でも顧客でもないんです。だから、50代からの起業は自己資金でないと意味がなかった。 また、シードマネーで資金を集める後輩IT起業家たちにマザーズとか上場した後、「株の売却益で生活が変わった?」と聞くと、「吉野家を食って一部上場を目指しますよ」と。それもどうなのかなと思いますけどね。人から預かったものをジャブジャブ使えとは言わないけれど、お金は筋力だから、株主の同意を得ながらちょっとずつ自分の体験を変えていかないと、いいサービスはできないですよね。少なくともわたしは、もうそういう世界はいいかなと思いました。

白河:お金は筋力。その言葉、腹落ちしました。すごくよかったです。

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