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投資によって変わる社会

発想の原点は、「構造を見る」ということ  Talked.jp

福田:ちょっと話は逸れますが、近年のユニコーン企業といえば、メルカリがすごいですよね。メルカリの時価総額は上場時7000億円。そうすると、株を1パーセント持っている人が70億。そのことが、日本にどれだけエンジェル投資家を生んだか。つまり、あれが成り立ったというのではなくて、その時価総額で恩恵にあずかった小口の株主の人たちがまたエンジェル投資をできるので、大きいユニコーンがあると、それがプラットフォームになって社会が変わっていく。だからたくさんユニコーンをつくっていかなきゃいけないなと思うのです。

白河:「大きなユニコーン自体がプラットフォーム」という福田さんのお考えは面白いですね。私はClubhouseを始めてみて、知らない人と知り合える機会が増え、女性のVC(ベンチャーキャピタリスト)などに知り合えました。
先日は海外で女性のスタートアップのアクセラレーターをしている女性との話が面白かったですね。女性のスタートアップは数が少ないよねといわれるけど、それはチャンスがすごく少ないからです。お金を出す側はほとんど男性で、投資されるチャンスがないしセクハラにもパワハラにも遭うし。ピッチプレゼンで一位をとっても女性というだけで投資されない例はたくさんあるそうです。とにかく女性のスタートアップがお金を得るのは大変。だから、女性がやっている女性だけのVCが、アメリカで110個できたと言っていました。前はなかったそうですが、「やはり、女性には女性が集中的に投資しないといけない」と。「その人たちはどういう人たちなの?」「最初に成功した人たちは、誰がお金を出しているの?」と聞くと、先に成功した女性がお金を出していると言うので、すごいなと思いました。自分も苦労をして分かっているのですね。女性はいいアイデアがあっても、なかなかお金につながりにくい。素晴らしい起業の芽があったとしても、セクハラで消えていってしまう人もたくさんいて。だからそのためには女性に特化して投資してくれる人が必要だと思います。

福田:そう思います。投資会社って男社会だったりしますよね。 僕はある金融的な意味で、お金儲けに関心がなくて、儲かったものを社会に還元したいという思いから、沖縄での農業のモジュール化*を考えました。例えば1000坪の畑で、500万の純利が出るようなものをモジュール化して、沖縄で意欲あるのに仕事がなくて困っている人たちにノウハウをオープンソースで全部提供する。沖縄には荒れ放題の工作放棄地がたくさんあって、規制で住宅転用もできないし、無残な状態の畑になっているところが多いんです。農地バンクがあっても、マッチングが機能していない。だから、遊休の土地の情報が自分のところに集まってくるような仕組みを作ろうとしています。いまは、東京から来て新規参入という形では、審査が後回しにされてしまう。その理由は農業経験がないからだそうです。そんなこといってるから、どんどん農業が衰退していく。
だから1つでも2つでも成功例をつくって、それをモジュール化して、みんなに委嘱させていくことで自給率を高める。さらに、“安全な食”。現地の方は、「自分で食べたくないようなものは作りたくない」と、新参者の僕にも話してくれるほど意識が高い方が多いです。だから、DtoC(Direct-to-Consumer)ですよね。今は「食べチョク」や「ポケットマルシェ」(ポケマル)など産地直送の仕組みもいろいろあります。ICTをベースにしながら、スモールコミュニティーをグローバル化させていくということを全ての分野でやっていきたいのです。

白河:面白いですね。仕組みを作る天才ですね。そうすると、福田さんのお考えでは、JAなどはないほうがいいわけですね。

福田:どうしても小規模農家など、作るだけでマーケティングやIT弱者がいますので、JAはJAで役割があると思います。地方では、毎朝JAの無料巡回バスが来るんですよ。車を運転しなくなった高齢者の人たちはそのバスに乗ってコープに行って、そこでお茶を飲んで食べて友達と話して、夕方4時ごろに帰る。それがルーティン。つまりJAなしには暮らしが全く成り立たなくなっているわけです。だから、JAは大事。
ただ、それだけじゃ農業の衰退をおさえられないから、プランBも必要と考えました。
JAバスだって、スマートシティーができて、自分の行きたいところが全部インプットされていて、無人の車で連れて行ってくれたら、もっと変わるじゃないですか。

白河:いいですね。私もそこに住みたいなあ。

福田:だから、トヨタの「ウーブンシティ」みたいなのを日本中にどんどん作ってほしいです。スマートシティーというのは、30万人ぐらいの都市でガソリンの車を完全になくして、EVの無人運転ができる状態を完璧につくっていくことなのでしょうね。

白河:壮大ですね。いろんなところに同じ仕組みを転用できるわけですから。

*複雑で巨大なシステムやプロセスを設計・構成・管理するとき、全体を機能的なまとまりのある“モジュール”に要素分割すること。

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