logo

SFを読まない政治家は駄目?

発想の原点は、「構造を見る」ということ  Talked.jp

福田:例えば中国でテンセントが推進しているのは、信号機に車をコントロールできるセンサーを入れること。車が信号を見て止まるのではなくて、信号が車を見て止めるということ。つまりスマートシティーというのは街が主役なので、街が人と車をコントロールするのです。僕が思う近未来は、「車の免許を取りたいんだよな」「あれは特殊な免許が要るから、今は人間に発行してくれるかな」という、星新一の小説みたいな世界。「人間は運転なんてしちゃいけないよ。運転なんて、感情が高ぶる野蛮な行為だから、人は運転しちゃいけない」と。

白河:福田さんこそ、その発想はどこから来るんですか?

福田:SFは好きですね。

白河:やっぱり! そうかなと今のお話を聞いて思いました。じつは私も、昔はSFをたくさん読んでいました。今の政治家はSFを読んでいないから駄目なんじゃないかなぁと思うくらいで。

福田:僕も、そうだと思いますよ! われわれは、SF第二ブームの時ですよね。ハヤカワ文庫とかサンリオ文庫とか……。ファンタジーとSFが多かった。星新一のショートショートに、ある金持ちの社長が、悪くなった自分の臓器を全部入れ替えるっていう話もありましたね。それですごく長生きして、200歳ぐらいの時に執事が、「社長の人間としての部分は、歯だけですね」と言ったら「入れ歯じゃよ」というオチ(笑)。 臓器なんてこの20年以内に入れ替え可能な状態になるだろうし、それはまさにSFの世界ですよね。今この時代の状況を鎌倉時代の人に想像しろといってもムリですから、恐らく昨日の連続が明日なのではなく、ある日パッとイノベーションが起きて変わる日があるのだろうと思うから、僕はSF的発想を笑えないのです。

白河:コロナの世界とか、みんなどこかで読んだことばかりです。SFを読んでいる人と読んでいない人とでは、いろいろなことの見方やとらえ方が絶対に違うと思います。

福田:違いますね。ばかばかしいことを受け入れる力が付きますよね。なぜなら、「それ、ばかばかしくないかもよ」と思えるから。

白河:「明日が変わる」ということが信じられる。

福田:そうですね。Netflixで見た『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のシーズン6で、史上初の女性大統領になったクレアが、閣僚を全員女性にするんです。あのシーンを異様に思うのか、あり得る未来だと思うのかは、もはや想像力の問題だと思いました。

白河:SFは、ドラマも漫画もアニメも映画もあるじゃないですか。コロナの緊急事態宣言下で、東京駅がガラガラなんですよ。私はその光景を目にして、「これはNetflixで散々見たな」と思いましたもの。ちなみに、私はSFも漫画も好きなオタクなのですが、少女漫画家も結構SFを描いた作品がありましたね。

福田:萩尾望都さんとか。

白河:はい。一時期、少年漫画からSF作品がなくなって、昔のSFの香りがするものが少女漫画に残ったんですよね。萩尾望都さんはレイ・ブラッドベリが好きで、異世界ものなどのSF作品をたくさん描かれていました。考えてみると、パラダイムシフトやパラレルワールドなど、世界が変わるという概念にあまり抵抗がないのは、そういう作品を読んできた影響もあるのかもしれません。

福田:発想の源は、SFからつながっているという。非常にいい結論になりました。

白河:本当ですね。ここ何年も、ずっとゾンビものが流行っていますが、あれは感染症ものの暗喩ですよね。韓国の時代劇ドラマでも『キングダム』という非常に面白いゾンビものがありますが、あれも「流行り病」で人がゾンビになるところから始まります。世界はこういうことを予測していたのだなと思います。

福田:直感的にあったのかもしれませんね。

白河:きっと多くの人が思っていたから、ああいう映画がたくさん生まれて大ヒットしたのではないでしょうか。『鬼滅の刃』も、同じように鬼=ゾンビものだととらえています。

福田:ということは、ビジネスのリーダーや政治家は……。

白河:SF小説を読み、Netflixを見ろ、と。

福田:そうですよ! …というところでお時間となってしまいました。今日はいろいろな切り口からのお話がつながって、大変面白かったです。ありがとうございました。また、ぜひ!

白河:こちらこそ、有意義なお時間をありがとうございました。

(了)

(前編へ)

TOPへ