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CM出身のディレクターに注目する理由

伝説のプロモーターが読み解く「エンタメの未来2031」(後編)  Talked.jp

福田:技術的な底上げや業界そのもののしくみ改善など、いろいろなことをインテグレーションしていかないと、次世代に繋がらないですね。でも、それらひとつひとつを解決することによって、日本からもグローバルに響く企画は出せるはずなんですよ。たとえば『万引き家族』の是枝裕和監督の作品などがNetflixで配信されているじゃないですか。そういう中身のある監督、脚本がもっとグローバルに活躍する必要性を感じますね。

北谷:是枝さんは、もともとテレビのCM出身の方ですよね。テレビCM製作から来た監督が、通常のテレビドラマを作っていた監督よりも、なぜグローバルマーケットで可能性があるのか。なぜだと思います?

福田:自分のCM自体が、グローバルなマーケットに評価される機会が多いからでしょうか。

北谷:それもあるかもしれないですけど、CMって、書き割り(*4)があるじゃないですか。

福田:そうか! ちゃんとカット割りして、計算して作っている!

北谷:そうです。CMは全部ストーリーボードがありますよね。ストーリーボードでワンショットずつ必ず、どういった背景で、どういった全景で、どういったカメラムーブメントで……と、全部書いてありますよね。

福田:そもそも企画が通らないですもんね。それがないと。

北谷:そうです。だからCMの監督とは、そういうカット割りを考える、元の素地があるわけですよ。なので、もし福田さんが映画監督を支援する場合は、CMから入った監督に注力すべきですね。

福田:なるほど。『下妻物語』(2004年)の監督の中島哲也さんも、CM出身でした。たしかにCM出身の名監督はいっぱいいますね。

北谷:そうなんです。だから、日本でグローバル展開の可能性があるクリエイターを探そうと思ったら、CM出身の監督にまず目を付ける。あとは、先述の脚本の話と、製作のメソドロジーのところをちゃんとやり直す。こういったことがそろえば日本人は器用ですから、1回理解してしまえばちゃんと作れるのではと思います。次世代の人たちにはぜひ福田さんから、啓蒙していただきたいです。

福田:はい。大役ですが、頑張っていきたいと思います。

(*4)演劇用語で、大道具に属する張物(はりもの)や背景幕に建物、風景などを遠近法によって書いたもの。柱、壁、戸または山河などをいくつもの張物に割って書くことから生まれたといわれる用語

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