クラウドファンディング総まとめ[後篇] | Talked.jp

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クラウドファンディング総まとめ[後篇]

楽天形式のクラウドファンディング

福田:ちょっと戻っちゃいますけど、沼田さんが今、どういうお仕事をされていて、どういうクライアントさんがいらっしゃるのか、簡単に説明していただけますか?

沼田:実はGREEN FUNDINGというサービスは、クラウドファンディング業界では、前例がなかった新しい仕組みを取りました。よく「楽天みたいな形です」って説明しています。楽天ってよく考えると一個一個のお店って、実は全部独立しているじゃないですか。楽天って百貨店と似ていると思うんです。ポールスミスとかバーバリーとかそれぞれブランドがお店を出店していて、それぞれのお店にレジを置いてありますよね。でも館というかモールというか、伊勢丹という箱・ブランドの中ででお買い物ができる。一方、Amazonの場合は例えばイオンとかドンキホーテと一緒で、レジは一つしかないわけです。Amazonが一個一個仕入れてきて、全部Amazonで買い物をするという。
 僕の会社はAmazonではなくて、楽天を目指しています。GREEN FUNDINGの中に、例えば、千葉のラジオ局bayfmさんがやっている千葉地域に特化したクラウドファンディングとか、写真の事業をやっているアマナさんが運営している写真領域に特化したクラウドファンディングサイトとか、スポーツとか出版とか、あるジャンルや地域に特化した小さいクラウドファンディングサイトが出店されています。で、それぞれのパートナーさんとGREEN FUNDING の直営サイトとで、モールであるGREEN FUNDINGをつくっています。なので、直営サイトで僕らが一つ一つ直接プロジェクトを見ることと合わせ、パートナーの皆様のサイトを通じてもいろいろなプロジェクトが集まってくるというのが特徴です。

福田:ネット業界だけじゃなくて、テレビ局もそうですけど、プラットフォームという言葉にビジネスマン弱いじゃないですか。なんかものすごく大きな存在で、何から何まで仕切っていて、昔で言う商社じゃないですけど、実際どうなんでしょうね。結局、どこのプラットフォーム使おうが、心を震わすような「これだ!」っていう面白い物とか事とかないと、誰も1円も払いたくないと思います。僕は社会人になってからコンテンツを作る仕事しかやったことないんで、本当に良質なものを作る人たちがいることが大事だって信じているんですよね。別に「企業として勝ちですか、負けですか」みたいな形でクラウドファンディングに入ってきたり、ローラー作戦で営業したっていいとは思うんですけど、その中に情熱ある個人がいて、その人はすごくユニークなリアル友だちや仕事を持ってて、かつ“ソーシャルグラフ”も豊かで、その二つが組み合わさったときに面白いものを提起できるのではないかと思います。

最初、クラウドファンディングが話題になったときに、女子大生が「卒業旅行の写真を各地から送るから、30万円下さい」って集めたりしていたじゃないですか。クラウドファンディングってこういうことなのかなと、ちょっと絶望したんですけど、そこから多少は進化しているんですよね?

沼田:僕自身も、コンテンツとかプロダクトを作る「プロ」がもっとクラウドファンディングの仕組みを使ってくれたらいいなと思っています。日本って出版社の数なんか、多分、世界一だとかいわれていて、中小の会社でよく町工場のおじさんが取り上げられると思うんですけど、実はコンテンツ系に関しても、ものすごいたくさん作れる会社がある。実際、たった一個のタイトルやロゴを作るために徹夜をしたりして、神が宿るんじゃないかってくらいつきつめて考え抜く力があるのはそういうプロダクションだと思っています。大手の代理店クリエイターやコンサル会社、出版社、印刷会社などは大抵はそういう人たちをうまくマネジメントしているだけですよね。一方でIT系企業の良くないところの一つはそういう一見非効率にも思える「突き詰めて作る努力」を軽視することだと思っていて、だからこそ僕はクラウドファンディングではIT系企業が苦戦しているのだと考えています。
話は戻りますが、彼らが作る力はあるのに、彼らが自分たちで面白いと思ったものを作ろうとしたときに必ず発注元の上流の会社、例えば出版社の了解取らなきゃいけないとか、映画会社の予算もらわないとできないとかってなっている部分があって、そのせいで革新的なものがうまれてこない。だからそういう日本の「現場でつくっているプロ」たちにもっとクラウドファンディングを普及させたいと思っています。 あとはプランニングに力を入れていきたいと考えています。同じ内容のプロジェクトでも訴求ポイントを考え抜いて、タイトルや動画、画像など、コミュニケーションをデザインすることで、不思議なくらいプロジェクトの成功失敗が変わってきます。単なるお金くださいプロジェクトでは広がらないと思いますし、逆にそこにプランニングやコミュニケーションの視点を加えるとクラウドファンディングがますます面白いことになりそうなので、今はその方向を追求しているというとこですかね。