SNSを活用して、人に夢を与えるモデルになれ 実業家 福田淳@第1回サトルジャパンSNS講座【後編】

ステマにならないために

あと、ステマにならないための作法も知っておく必要があります。クライアントからの依頼で、自分が好きかどうかもわからないような商品について、あたかもそれが自分の好みであるかのようにインスタで宣伝させられることがあります。例えばある化粧品のタイアップ広告で「モデルさんも使ってます」みたい売り方しますよね。昔の洗剤のCMもそうですね。主婦が「汚れがこんなに落ちたわ」って驚いてみせる。この手法は今でもあるわけです。これってクライアントが150字ぐらいの雛型の文章を考えて、「あとは適当に前後、あなたらしく盛って書いてくださいよ」と仕事として依頼しているんですね。うちの会社でも先日インスタグラムキャンペーンやったのですが、10人のかたを起用したら、うちの担当者だとか、プロデューサーからいろいろ言われたんでしょうけど、6人か7人はコピペですよね。もう真面目に仕事をする気ない。クリエーティビティのかけらもないんです。

確かにいい点を文章で書くのは難しい作業だけど、分かんなかったら分かんないで、いろいろお友達に聞いて書き直せばいいと思うんですよね。皆さんもクライアントからそういう依頼が来た時は、雛型の文章をどれぐらい変えていいかって聞いてください。言われたままやるのではなく、自分らしい表現にこだわるのも大事なお仕事の作法です。もし僕があるアイスについて宣伝しなければいけなくなったら、まず食べてみて、「こういう風に書けよ」って言われた内容と自分の感想が著しく違わないか、調べてみますね。そして、この商品全然メイクセンスしないなと思ったら、断りますよ。仕事だからしょうがないやっていう人もいるかもしれませんけど、僕はどんな仕事に就いてても、自分が嫌だと思ったことはやる必要ないって個人的には考えています。今まで会社経営してきて、「お金もうけだからやれ」って言われた仕事は大体断ってますけど、それでしまったなと後悔したことは1回もないんで、皆さんに僕のこの考えを伝えても多分、そんなに間違ってないと思います。

いくらお仕事とはいえ、思ってもいないことをインスタに投稿して、勝手に炎上して、自分のブランドが下がるのは嫌ですね。例えば「何か美顔器のこと書いてくださいよ」という仕事依頼があったときは、クライアントさんに「ハッシュタグにPRって付けていいですか」と確認するのも有効です。『PR』であることを明らかにするだけで、炎上リスクはだいぶ抑えられます。炎上で消えたタレントさんが何人もいるように、仕事とプライベートの両方でソーシャルメディアを使うのは非常に難しいんです。4媒体、テレビとか、雑誌しかなかったときは、マネージャーが守ってくれたんですけど、自分のソーシャルメディアやるときは自分が編成部長なんです。リラックスして楽しい表現をする一方で、こういうPRタイアップものを投稿する場合は、最低限の作法を押さえとかなきゃいけません。タグピクって今、インスタとかで伸びてる会社は、「これが企業がお願いしてモデルを起用した宣伝なんですよ」という手法をちゃんと打ち出したことが評価されています。皆さんの中にもすでにお仕事されたかたいるかもしれませんけど、覚えておいてください。

SNSで成功するには?
常にバッターボックスに立つ

例えば、『ポケモンGO』が始まったら、やってみる。「明るいは七難隠す」というか、みんな、明るくて元気な人が好きなんですよ。バカでもなんかポジティブに見えたほうがいいんです。成功しているビジネスマンの大先輩には当然、頭切れ切れの方も多いんですけど、その一方で「よくこの人、社会的に成功してんな」っていう先輩も、いっぱい見て来ました。すごい勢いとエネルギーで逆境を乗り越えている。何言ってるかさっぱり分かんない。でも、なんかうまくいっているっていう人が何人もいるんですよ。1人か2人なら、まあいるかなと思うんですけど、結構、何人もいる。銀座で豪遊しているのを見ていると、エネルギー分量って大事だなと思いますよね。勢いで乗り切るっていうか。

こないだ、ある大学で就活に関する講演をやらせてもらったときに、質疑応答コーナーで、「どうやったらASOBISYSTEMに入れますか」と聞かれたんですね。「じゃあ、渋谷のクラブWOMBに行って踊ったり、そういうの大好きなの?」って聞いたら、「行ったことありません」って言うんですね。そのエネルギー分量のなさ、もうその段階で僕には何もアドバイスすることないわけですよ。本来なら、クラビングが好きだから、あそこに入りたいとか、何か自分の好きなものに対するエネルギーがあって、「それをやりたい」ってなるはずですよね。そんな探求心もない人に誰が助言するでしょう? 今は、そんな暑苦しい時代じゃないよって言う人いるかもしれませんけど、僕はそう思わないので、常にバッターボックスに立つ。「モテないんですけど、どうやったらモテるでしょう」って言う人も同じで、そもそも打席に立ってない。家飲みばっかりしてたら、誰とも接点あるわけないですよね。別に興味ないけど、誘われたら、そのイベントに行ってみようかとか、好奇心持ってやることが大事だなと思います。とにかく何でも挑戦してみることが大事ですね。だから、Snapchatでも、MSQRDでも新しいフィルター出たら、即日試してます。さすがに毎日チェックしているわけではないのですが、アンテナは常に張っていたほうがいいです。

というのも、新しいことは全て、自己表現の手段にできるのがインターネット時代なんです。インターネットの特長って、双方向性なんですね。だから、例えば選挙でも、昔だったら、立候補者は尊敬できそうな偉い人に見えて「誰に投票しようかな」と思っていたのに、なーんかちょっと女子大生を連れ込んでたかもしれないとか、切手ばっかり束で買って領収書をもらい、新橋で現金化してたんじゃないかとか、もう、みんなが芸能リポーター化しちゃってるわけですね。そういう時代だと、ソーシャルメディアは自分の身を守る武器になってくれる一方で、非常に危険な武器にもなり得るんです。

ソーシャルメディアが特殊なんじゃなくて、そこで起きてることは現実社会と全部一緒なんです。ネット上のストーカーだとか、脅かされて自殺したりする小学生の女の子なんかいますけど、それって別にインターネットがなくてもあったんですよ。でも、大人自身がインターネットについて知らないから、「危ないから規制しよう」っていう話になるわけですね。だけど、その対策法は子どもには効かない。僕自身、ちっちゃいときから、押すなっていうボタンは確実に押していたタイプなんで、よくわかるんです。避けるんじゃなくて、むしろ思いきってどんどんやらせてみる。実際に何が危ないか体験してもらうっていうことが大事なのかと思います。

出会い系サイトが流行り出した頃、北海道の先生が、自分の生徒にドコモから借りた携帯を渡して、「出会い系でも、ポルノでも、何でも見てみろ」って言って体験させたら、みんな、「意外と怖かった」とか、「危険なことがよく分かりました」って、メディアリテラシーが高まったんですね。やるなって言うよりもやってみたほうがいいんですね。本当に申し訳ないけど、今日の話を真面目に実践したのに、炎上しちゃったってこともあるかもしれません。でも、それも自己責任だし、ちゃんと対処の方法はあります。失敗した分、成長もしますしね。

ちょっとまた社会論になるんですけど、『ポケモンGO』の発祥が日本のポケモンであるにもかかわらず、なんで最初、アメリカから発売されたのか、いろんな意見が飛び交ってるので、Nianticの日本社長に直接聞いてみたところ、日本には製造者責任と言って、作った人の責任になるPL法があって、それも関係しているそうなんです。例えば、テレビのまねしてプロレスやって、誰かが首の骨を折ったっていったら、フジテレビが悪いと言うのが日本人なんですね。その点、アメリカは自己責任の国なんで、『ポケモンGO』をやりながら沼に落ちて死にましたっていったら、そいつが悪いんです。「使い方分かってねえな、バカ」ってなるんですね。だから日本でぐずぐず、ネガティブなこと言って話が進まないうちに、アメリカで売り出されてしまった。海外で普及したものが、後から日本に来ると、日本人はひるんじゃうんですね。だから、実際は日本でもそんなに規制がなく始まってますよね。昨日も、自民党部会が『ポケモンGO』に対する見解を出していましたよね。これは気を付けてやったほうがいいけど、選挙にも何か使えるかもしれませんねって。結局、最初にちゃんと設計して考えたマーケターが正解なんです。

未だに、日本のソーシャルメディアも、週刊誌とかテレビなどのマスメディアも、『ポケモンGO』で事故が起きたとか、あのお寺さんの境内ではできなくなったとか、やっぱりネガティブな話題を取り上げがちですよね。でも、アメリカの記事見ると、『ポケモンGO』のおかげで人が集まったとか、ボランティアになったとか、こんな面白いことがあったとか、ポジティブに捉えている。やっぱりもともと持ってる国民性の違いっていうのが大きく出るなと。僕も非常にポジティブなので、別に『ポケモンGO』だけでなく、さっきのPrismaでも、SNOWでも、今後出てくるものも何でも自己表現の新しい方法として、やってみたらいいかなと。