コンテンツプロデュースの秘訣教えます

しあわせになる仕事術(前篇)

構成: 福田千鶴子
撮影:越間有紀子
日程:2017年4月18日

北川 拓也(写真左)

ハーバード大学卒業後、同大学院で物理学の博士課程を修了。理論物理学者として『Science』などに15本以上の論文を発表。楽天ではビッグデータおよびデータサイエンスの担当として、「データの価値は、金銭に置き換わっていない本質的価値の発見にある」という考えのもと、グループ全体のデータ活用を推進する組織や仕組み作りを統括。EC分野では商品データカタログの構築やデータを使った店舗支援のソリューション提供を行う。

福田 淳氏(写真右)

ソニー・デジタル エンタテインメント 社長
1965年生まれ。日本大学芸術学部卒。アニメ専門チャンネル「アニマックス」など多数のニューメディア立ち上げに関わる。(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント バイス・プレジデントを経て現職。

理論物理学の世界になかったのは人との関わり

福田: 北川さんにお会いする前に少し検索してみたのですが、灘中・灘高卒業ということは関西出身でいらっしゃる?

北川: はい、西宮です。あんまり出ないですけどね、関西弁。

福田: そうなんですね。僕、高槻ですが、実家は西宮北口なんです。実は一時期、僕の会社は関西人と芸大出身者しか採らないって言ってたんですよ(笑)。

北川: すごいバイアスですね(笑)。

福田: 2年ぐらい前にアメリカで『プランド・ハップンド・セオリー』っていう本が流行ったんですけど、偶然に身をまかせることによってキャリアを築くっていう内容なんです。コンセプターの坂井直樹さんと話した時に、「福田さんみたいな仕事の仕方を何て言うか知っている?」って教えてもらったんですけど、確かに僕のこれまでって、人生ゲームでいうと、なんか偶然に身を任せてきたような感じなんですよね。
 14歳の時『スター・ウォーズ』見て「映画監督になりたい」って思ったんですが、気づけば今、スマホの仕事とかしている。本当は500インチのスクリーンに映画を映したいと思っていたのに、5インチの画像で仕事してるんですよね。だけど、エンターテインメントを提供して人を楽しませるって意味では、あんまり本質的なところは変わっていない。自分の中では整合取れているんですけど、人から見たら、「なんだ、ハリウッドじゃねえじゃん」とかツッコミたくなるかもしれません。北川さんは、どういうキャリアパスというか、何になりたかったんですか?

北川: 僕はもともと理論物理学者だったんですね。学者としてかなり長いことやっていて、ある意味、自分の天職を見つけたと思ったんですよ。簡単に言えば、理論物理って、こうやって考えているだけで興奮ができる仕事なんです。なんか変な話なんですけど、物理って神がかった話で、あんな数式とか、あんな理屈で物事が説明できちゃうんです。その結論としてどうなったかというと、理論物理っていうのはそのものづくり、例えば電子機器だとか、量子コンピューターとか、そういったものを作る世界なんですけれど、ある程度、説明できちゃっていて、例えば超電導みたいな物質も理解されているというか、量子力学のこの性質を使って、こういった物質で、こういうことをすれば、こういった新しい現象が生まれるはずっていうことを、ある意味、空想の中で実現できちゃうんですね。「量子力学が正しい限り、こういうことをしたら、こういうことになるから、こんな実験したら、こんなこと起こる、やべえ!」みたいなことを、興奮して論文に書いてしまう。理論物理学者からすれば、この世の中っていうのはデザインできるんだって考え方がすごい強いんですよ。

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