logo

しあわせになる仕事術 Talked.jp

僕の理論もそうだったんですけど、例えばちょう7年ぐらい前に書いた論文が、4年ぐらい前に実現されて、サイエンスとか有名科学誌に掲載されて結構盛り上がった時代があるんです。7年前の今日みたいな気持ちの良い日に、公園のベンチに座って、鉛筆と紙とパソコンを置いて、ひたすら空想でこうやったらこうなるみたいなことを論文にしたんですよね。興奮して人生が過ぎていくような日々でした。すごく満足感もあったし、明らかに自分が新しいアイデアを生んでいるというか、うまくいってる手応えがあったんで、論文もたくさん出して、すごい満足感があったんですね。
 これはこれで一つ完成した形かなって僕としてはすごく満足していたのですが、同時にその世界になかったのは人との関わりだったんですよね。何となくこの部分が足りてないなってすごく極端に感じて、せっかく1回の人生なんだから、その足りてない部分にもっと立ち会ってみたいと思って、ビジネスの世界に来たんですよ。

自己批判が強い人の方が経営者には向いている?

福田: なるほど。「最初に夢想したことがある程度できる」って思ったのは、おいくつぐらいの時だったんですか。

北川: 26歳ぐらいのですかね。

福田: 例えば僕だったら、子どもの時「007になりたい」とか、単純な夢を見てたんですけど、そういう意味での何かになりたいっていうのはあったんでしょうか。

北川: なかったですね。

福田: それも珍しいですよね。

北川: 本当ですか。結構、哲学的な存在でしたね、僕は。

福田: なんか本の影響を受けて?

北川: そうなんですよ、本の影響はかなり受けていますね。昔から思っていることなんですけど、目的の置き方って人によって二通りあって、目的をゴールに置く人と、プロセスに置く人がいるんです。僕は極めてプロセスに置く側だったんですよ。  僕が小学校、もしかしたら幼稚園ぐらいの頃に、戦争が起こったり、人が人のこと嫌いになったり、世の中は何かがおかしいと考え始めました。そして、人は間違いを起こす存在なんだと、まず気付いたんですね。歴史を見ても人は間違いを起こしまくってる。なぜ起こすのか。やっぱり思い込むことが危ない。じゃあ、どうすれば常に間違わずにいられるかって考えたんですけど、「人間が間違わないなんて無理なんだ」ということに気付いたんです。だから、とにかくどんなに正しいことをやろうとしても、一つのことに拘った瞬間に、人は間違えると。それならば、プロセス的に自分のことを常に批判し続けることこそが正義であろうと感じて、その自己批判というものが究極の正義であるという考えにたどり着いたんですよね。

福田: 最近、流行りの言葉で「自己肯定感」って言うじゃないですか。精神が弱いから自己肯定感を求めるんでしょうけど、実は自己批判が強い人の方が割と経営者には向いてますよね。というのも、「こっちの方向だ」って決めても、進んでいるうちに不安になるのが経営者じゃないですか。だから、ジョブズはいつも人のアイデアを取るっていうけど、多分本人に取った意識はなくて、置かれた状況に対してそれが自分のものになってるというか、他人の心も含めて自我になっちゃってるような人が独創的な経営者になるのかな。

TOPへ