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アドバタイジングからブランディングへ Talked.jp

時代の最先端を紡ぐのは、直観的に動いているアーティスト

福田:先ほど、テレビやラジオ、雑誌の復権が話題に出ましたが、雑誌だって、どこをどう見ているか、ちゃんとヒートマップを作ってインタラクティブ性を証明できれば、ネットに慣れたクライアントもまた戻ってくるんじゃないかと思います。だけど、柳瀬さんの話はさらにスケールが大きくて、町だとか人だとかコミュニティだとか、トライブ(族)そのものを見直すことによって新しい未来が開かれるんじゃないかというお話でした。

柳瀬:高層ビルの1階、2階はメディアであり町であるってことを、つくっている人がほとんど意識してないんですよ。数少なくうまくいっているのは丸の内ですね。今、ショッピング街になっています。あの街は、ロンドンの金融街がモデルのはずです。明治時代、三菱地所の岩崎小弥太がロンドンに行って、金融街の街の構造を勉強して、移植した。ゆったりした一方通行で輪留め。馬車を止める場所をつくる。歩道は広々。すべてのビルの1階は必ず歩道に面したお店にする。石づくりだから簡単には箱が変えられない。ハードすなわちインフラの形は変えられないけど、ソフトはどんどん変わる。だから、設計思想を明確にした。
 ただし、昔は丸の内って全部銀行と証券会社と保険屋さんだったから、休日はゴーストタウンだったんですよ。ところが、バブル崩壊、金融崩壊で、銀行、証券との合従連合が起きて、店舗数がそれほど要らなくなっちゃった。そこで、かつての金融街に高級アパレルなどを誘致したら、ぴたりとはまり、いまでは高級ファッション街に変身できた。東京駅から有楽町までつないで。

福田:やっぱり土日にゴーストになるビルを建てているようじゃ民度が低いですね。最近、経営者へのアドバイスで必ずいうのは、「人文的価値観」を持って経営してない人は駄目ってことです。数字やマーケティングなんて誰でもできるけども、歴史の中で自分がやろうとしていることの位置付けに関心をもつとか、アート的なセンスをもつこと。これがあるかないかは、さっきのブランド理念を発見するに至るか至らないかと大きく関わっていると思うんですね。
 なのに、会社のホームページ見ると、わかんない社長の顔写真が出てきて、「人々にワクワクを届けます」って。一切メッセージが伝わってない。

柳瀬:そうすると、日本の大企業からは、なかなかダイソンの掃除機みたいなものは生まれないし、バルミューダのトースターみたいなものも作れない。

サラリーマンの大半は消費者じゃなくなってしまった

福田:いや、もう今日の話は面白くて興奮しましたよ。柳瀬さんと一緒にブランドコンサルティングの仕事をやりたいものです。うちの会社の顧問をやってくださっているコンセプターの坂井直樹さんって、大学卒業してからサラリーマンになったこと一回もないんですよ。それなのに企業の人に鋭く直言しながら、アイデアもいっぱい提言されています。

柳瀬:逆にいうと、サラリーマンをちゃんとやるほど消費者に受けるものが作れなくなるというジレンマを、常に抱えてるんですね、サラリーマン組織って。

福田:面白い。今、大事なところでしたよ。

柳瀬:面白いのは、インターネットの会社がテレビCM使うのと全く一緒で、ネット企業やベンチャー企業のトップが、みなさん書籍で自らのメッセージを発信する。本は最強のブランドツールなんですよ。

福田:いいアートがわかるっていうのと同じぐらい価値がある。私が12月に出す新刊は「Kindleも同時に配信」してくださいとお願いしてあります。

柳瀬:村上春樹さんは、Kindle同時配信をしませんが、大半の著者は、紙の本とKindleとを同時に出したほうがいいです(笑)。

福田:僕がテイラー・スウィフトだったら、最初はCDだけ出すかもしれないですけどね。(笑)

柳瀬:われわれは、村上春樹でもテイラー・スウィフトでもない(笑)。

福田:だから、すぐに流通できる状態に、おっと思ったら即、手に入る状態にしておかないと。あれ、電子だったら、ある程度お金ためておけば、ギフトにできるんでしたっけ。そしたら、献本よりもはるかにいいかなと。本ってすごいたまるじゃないですか。自分の読みたい本と、献本される本ってありますよね。読みたい本はKindleで読むんです。でも、献本されるのはリアルな本なのですが、もらっているのに、わざわざKindleで買って読むんですよ。でも、Kindle出てない本もあって、そういうときは秘書に自炊してもらったものをPDFで読んでます。アプリ10個ぐらい試した中に、Kindleの仕様そっくりのPDFで読めるapp「SideBook」で読ませていただいてます。

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