キャラクタービジネスの知られざる歴史 -ミッキーからペコちゃんまで-| Talked.jp

Talked.jpby Sony Digital Entertainment

福田:すごいですね。そんなに若かったんですね。

高橋:「今、何が一番売れているんですか?」って聞いたら、「宝石です」と。「分かりました」って言って、全部ガラスケース外して、ごちゃごちゃ入っているもの全部取っ払った。「メイシーズほどの百貨店なら、みんなに知られている。だから全ての商品を並べる必要はない」って。で、黒ビロード敷いて、そこに宝石だけ置いて、スポット当てるみたいな。今なら当たり前なんですけど、そのディスプレイで成功するんですね。

福田:素晴らしい。

高橋:20代のときには、宣伝美術の衣装の部門の長になりました。そのレイモンド・ローウィが不二家のルックチョコのパッケージデザインを手がけたんですよ。あと、たばこのピースのパッケージも。

福田:すごい昔の話ですよね。

高橋:1960年代ですね。

福田:懐かしい。今でも一部残ってますよね。でも、なんで日本の仕事までしたんでしょうね?

高橋:当時、日本でレイモンド・ローウィは有名だったんですよ。ラッキーストライクのパッケージも全部彼なんで。

福田:なるほど。

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レイモンド・ローウィデザインのパッケージ

ペコちゃんスタンプは実に前衛的!

高橋:で、ペコちゃんなんですが、あれのもとになった絵も、アメリカにあるんです。ゼネラルフーズのバーズアイっていうオレンジジュースのブランドが、「メリー」っていう女の子のキャラクターを使っているんです。僕、もしかしたら、それもレイモンド・ローウィが手掛けたんじゃないかと推測しているんですよ。しかもレイモンド・ローウィが使い回ししたんじゃなくて、不二家が勝手に流用してしまったのではないかと。ルックチョコレートをレイモンド・ローウィが手掛けた背景には、それに対してのなんかこうお詫び的な意味合いもあったんじゃないかなと。

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バーズアイのポスター

福田:面白いですね。確かにあり得ますね。

高橋:裏取りに行きたいけど、いきなり不二家の広報に言って、「すいません」って言っても、誰もそんなこと分かんないですよね。今は山崎パングループですし。

福田:そうですよね。だけど、ペコちゃんにしてもまだ知財なんて言葉がない時代だったので、当時はそんな意識ありませんでしたよね。でも、デザインのルーツがアメリカなど全然違う所にあったりするって面白いですね。

高橋:面白い。僕はそういうことも若い連中に伝えたいんですね。つまり、今、若い連中って二次創作について、コミケとか同人誌という場所でならやってもオッケーだよねっていうところで終わっちゃってるんです。それに対して「いや、君たちだけが特殊なことをやらされているわけでなく、昔もやっていたわけだし、別に“裏”みたいなイメージはないんだよ」と。「逆にどんどん権利は切れていくんだから、それをどうやって自分たちで換骨奪胎するかが大事なんだよ」っていうことを教えたいと思っていて。

福田:今、セカンダリーマーケットでウォーホルのミッキーを描いたようなものを落札しても、ディズニーの方には全然入らないじゃないですか。あれは、知財がしっかりしてないときにあの絵が有名になっちゃったら大丈夫なのでしょうか。そこに疑問を感じてほしいですよね。

高橋:そうなんです。それをやっちゃいけないことだというふうに若い連中が自分でちっちゃな枠を作ってその中にはまっちゃうのが僕、嫌なんですよね。

福田:分かります。

高橋:だって、不二家のペコちゃんのLINEスタンプ、本当に秀逸じゃないですか。

福田:あれ、5年かかっていますからね。

高橋:すごいですよね。あのデザイナーが素晴らしい。

福田:「おなか痛い」ペコちゃんとか……。スタイルガイドも何もないんですよ。最初、ペコちゃんが舌出さないパターンも作ったんですよ。そしたら、「どんな苦しそうな表情をしているときも、たとえ泣いてるときでもペコちゃんが舌を出さないっていうのは社長が許さない」と言われたんです。だから、苦しいのに舌出している。でも、よく見たらこっちのほうが表現としていいわけですよ。

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いろいろな表情のペコちゃんスタンプ

高橋:なんか、危ないペコちゃんで。まさにアバンギャルドって言うか、普通のスタイルガイドに則って、無難に作ろうとする人たちに対して、パンクまで行かなくても、明らかに一つの前衛を感じるんですよね。

福田:今度、第2弾やりますよ。

高橋:そうですか。素晴らしい。まさに若い子たちに伝えたいことです。もちろん、やるときにはちゃんと礼儀を踏まないと駄目ですけど。

ボンド・ジュニアとピーターズ・アドベンチャー

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ジェームズ・ボンドノベル・シリーズ

高橋:ちなみに僕らは来年ジェームズ・ボンドジュニアをやります。8月に入って、多分行けると踏んで、急遽開発を始めるんですけど。

福田:そうなんですね。