不登校、引きこもりからの脱出
福田:中2で学校に行けなくなってしまった経緯をお聞きしてもいいですか?
家入:はい。中2ぐらいまではわりと明るいキャラで、みんなの中心まではいかないけど、4コマ漫画も書いていたし、みんなに見せてわいわいやるタイプだったんですけど。中2でクラス替えになっていじめられちゃって、そこから学校に行けなくなりました。家にずっと引きこもって。最初は親に無理やり引きずられて学校に行ったりもしましたけど、すぐ逃げ帰って、「家から絶対に出たくない!」っていう感じでした。
10代はほぼ家の中で過ごしていて、その時ずっと絵を描いていたんです。元々、絵を描くのが好きで、油絵とかを自己流で描いている中で「ちゃんと学びたい」と思って。大検*1)を取ったんですよね。僕、福岡だったんですけど、福岡に東京芸大の予備校みたいな美大芸大予備校があって、そこに通って、油絵をやっていました。でもうちは、経済的にかなり厳しい状況だったんです。で、西日本新聞っていう福岡の新聞会社に新聞配達をして奨学金をもらえる仕組みがあったので、住み込みで配達をしながら、日中は絵の学校に行って、というのが僕の10代でした。
福田:すごいですね。突っ込んだことを伺ってしまいますが、経済的に厳しかったという青年時代の状況は、どういうふうにご自身に影響されましたか。
家入:今の活動につながっているところはありますね。例えばクラウドファンディングをやったり、少し前ですけども、経済的に苦しい学生のために、みんなで学費を集める仕組みを作ったり。あと、この前上場したんですけども、誰もが簡単にショップを作ることができるショッピングアプリ「BASE(ベイス)」*2)を、創業者で代表取締役の鶴岡裕太氏の共同創業者ということで、起業しました。
福田:代表取締役の鶴岡裕太さんは、家入さんの「CAMPFIRE」で、エンジニアのインターンだったそうですね。
家入:はい。僕らはプラットフォームがすごく好きで。誰かが何かの声を上げようとした時に、それをたくさんの人で支えてあげたり、応援してあげられたりっていうのが、インターネットの良さだと思っているので、全部そこに立ち戻るといいますか。僕の場合は、自分が学びたいと思った時、学費が厳しかった結果、新聞奨学生で美大に行くことができたわけですよね。だから学びたい、何かをやりたいと思った時に、お金や生まれながらの環境とか、いろんな状況によって声を上げたくても上げられない人たちがいる。でも、当たり前のように、人生なんて不公平じゃないですか。だけどその不公平な中でも、一歩踏み出そうとする人をどう支えるか。どう応援するかみたいなところにはすごく興味があるというか、やっていきたいことでもあるんです。
*1)大学入学資格検定。2004年度以前の日本で実施されていた、日本の大学に入学する学力の有無を判定し、試験合格者は高校卒業者と同等の資格が得られる国家試験のこと。大検と略称されていた。 2004年度末に廃止され、2005年度より高等学校卒業程度認定試験に移行。
*2) 誰でも簡単にネットショップが作成できるサービス。導入が簡単な決済機能、デザインテーマ、トランザクション解析ツールなどネットショップの運営に必要な機能を備え、ネットショップをはじめることが困難だった人も気軽に始めることができる。