ハンダ付けで欧米ヒット40万台!
楠:転職先は、好きなことに挑戦させてくれる会社でした。僕は学生時代からずっとダンスをやっているんですけど、音楽も大好きなんですよね。そこで、好きなことを形にしようとアイデアを出して、ウェアラブルガジェットを作ったんです。手首足首に装着したバンドが体の動きやモーションを検知すると、スマートフォンへ信号が送られて、動きに合わせた音を出力させる仕組みで。「ミュージック・バイ・ムービング」という、動きによって音を感じることがコンセプトでした。
福田:IoTじゃないですか。じゃあわりと最近の話ですよね?
楠:2016年ですね。初めはIoTをやっていたんですよ。秋葉原で電子部品を買い漁って、ハンダ付けして作っていました。
福田:ハンダ付け!
楠:はい、ハンダ付け(笑)。あとは、チップ内のプログラミングですね。いろいろ調べたり教えてもらったりしながら完成させて、トイメーカーに売ってみることにしました。日本では全然相手にされなかったのですけど、海外のトイショーみたいなところで、僕が実際に踊ってプレゼンしまくったら、めちゃくちゃウケて。僕、ロボットダンスが得意なんですよ。僕が動くと「ガチャーン」みたいな感じの音が鳴るのが面白いと評判をいただいて、すごく注文が来たんです。結局アメリカ、ヨーロッパに40万台出荷しました。
福田:40万台!? すごい!
楠:トイは薄利なんですが、アメリカで50ドルでした。
福田:すごくないですか?
楠:2バンドセットで。ウォルマートなどで、付けてもらって。みたいな交渉を全部やって。でも、これはおもちゃだったので、継続するのがなかなか難しくて……。
福田:1回買っておしまいになっちゃう?
楠:一気にバーンいって、これはきたなと思ったんですけど。1年ぐらいでパタッと終わって。
福田:そのときはその会社に勤めていたんですか? つまり自分にロイヤルティーは入らない?
楠:そのときは、新規事業から子会社として分社化したという感じでやっていました。
福田:お若いですよね。2016年って。今おいくつですか?
楠:僕は今32です。
福田:若い! むっちゃ若い。ということは28歳で社長になられて。
楠:社長というか、そんな大層なもんじゃないですけども。頑張ったんですけど、続かないなという。やっぱりビジネスモデルって大事だなと学びまして。
福田:でもそのときに作ってくれた株主は、「すごいね」というのはあったわけですよね。40万台も。
楠:そのときはそうですね。なのですけど、そんなに続かなかったので、それが反省として僕の中にありまして。
福田:例は古いけど”たまごっち現象”*ですね。
(*爆発的に人気トイだったが、ブームが想定より早く去り大量の在庫が残った)
楠:”たまごっち現象”です。それで、そこから今手がけているAI作曲のほうにシフトしていったんです。