新しい音楽業界のカタチとは
福田:楠さんの試みは別として、今は音楽って流行りにくいですよね。
楠:そうですね。
福田:YouTubeで「香水」の替え歌をアップするとかはコロナで少し流行りましたけども。原曲よりも、カバーしている高校生のほうがうまい、みたいなことでバズったり。そういう導線って、ネットっぽいんですけど、マスコミや世の中全体を動かすまでにはいかないんですよ。そういえば、ビートボックスというのですかね、声ばっかりで曲を作るのも一時流行りました。あなたはベースのパートね、みたいな。
楠:ビートボックスですか。
福田:自分の声を録音しておいて、それを音階に変換してハーモニーを作ったりして。「SOUNDRAW」は人の声で曲調を作っていく、なんていうことはできるのでしたっけ? 声をインプットして。
楠:できます。AIがするのをMIDIデータといいまして、要するにどのタイミングで、どれぐらいの音の、どの音程の音を入れるかという情報だけなのですよ。そこはAIがバーッと作る。そこにピアノの音を入れたり、オルガンを入れたりできるので、そこに例えば音程に合わせて声を入れていくと、コーラスをしているように面白い感じでできるんですよね。そういうのはコラボレーションとしてすごく面白い。AIが作ったメロディーに、あらかじめ入れておいた声を当てはめたらこうなった、みたいな。
福田:そうすると、それが第2フェーズですね。ビジネス的にいうと「SOUNDRAW」は第何フェーズまであるんですか?
楠:ビジネス的に言うと、動画クリエイター10万人以上に使っていただくというのが初めの目標です。そのあとは、やっぱり歌手、アーティストの方、ラッパーやシンガーの方に使っていただきたいと思っていまして。
そこからヒットソングが生まれたりするとすごくうれしいなと思うんですよね。デビューするハードルが低いと、つまり事務所に所属しなくても、自分で音を買って、ラップを乗せて、Spotifyに配信しちゃえばいいじゃん、と。そういうことが気軽にできる環境が整えば、やってみたいという若い層はたくさんいると思うんですよね。
福田:いるいる。
楠:そういう人たちにとって、「これめっちゃいいやん」というツールになればいいな、というのがありますね。もっというと、そういう人たちの声のデータを蓄積していって、そのデータを今度は動画のクリエイターの方々などが使える感じになれば、すごくいい循環が生まれるなと。
福田:作った曲、成果物は、また皆さんがどうぞと。とすると、新たな著作権事業ですよね。それこそ「BeatStars」で10万回以上やったらどうこうよりも、クリアなビジネスモデルかもしれませんね。近いけど違いますね。出来上がったものを再許諾というか、再利用しようと。
楠:そうです。
福田:でもね、その仕組みをプラットフォームに入れると、結構権利承諾が大変かもしれませんね。
楠:大変かもしれないです。
福田:今はなんとなく、権利に縛られたくないから自分で作ったけど、作ったものは別にフリー音源じゃないよと。最終使用者が自分まではよかったのだけど、それから次のステップが大変かもしれませんね。
楠:うーん。だからうちのプラットフォーム内でやり取りをする分には、利用規約で定めてしまって、売り切りオンリーとか、シンプルな感じの整理ができれば、そういったこともできるかなと。