ないものを生み出せる人間のパワー
福田:ところで楠さんは尊敬する経営者はいるんですか? この人は起業家としていいな、というような。
楠:ベタですけど、ジョブズが好きで。
福田:ああ、いいですね。
楠:作るセンス、それこそアートの要素とエンジニアリングの要素、両方持っている方なので。
福田:関西人ですよ。あのノリは。
楠:血がね。ちょっと混ざってますね(笑)。
福田:細かいことを急にやったりね。何か関西っぽいですね。普通の経営者って、あんまり細かいことを言わないんですよ。関西人は、会ったら「おまえはクビや!」みたいな感じで、「なんでクビなんですか?」と聞くと、「おまえは仕事できひん」とか「俺と相性合わん!」みたいな。
楠:揺さぶるね、というやつで。でもそういうのが好きで。ないものを想像してそれを生み出すって、人間のすごいパワーだなと思うんですよ。僕は昔から、道具を作るのもすきでしたし、妄想をして、それを生み出すってすてきやなって思うんです。
福田:分かる。テスラCEOのイーロン・マスクなんかもSF小説や漫画が大好きですよね。「こんなものがあったらいいな」っていうのを実現させているし。
楠:すごいですよね。僕はそれを楽しいなと思っていて。さらに、そういうことをチャレンジしているクリエイターさんに、今度は自分の作ったものを提供することで、そこのお手伝いもできるという、二重の喜びが。
福田:すごい。これはもう間違いなく成功が見えましたね。
楠:見えましたか(笑)。
福田:だって失敗の要素が何もないじゃないですか。
楠:どうなんですかね。焦り過ぎもよくないし、焦らないことぐらいですかね。今は。
福田:それが32歳の若さで分かっていらっしゃるというのは、すごいことですよ。
楠:いえいえ、焦るんですよ。すぐに。「ちょっとお前、早うしろ!」みたいになるんで。
福田:僕はね、それを制御するピンが外れちゃっていて。どんどんやっちゃう。「なんでも自分でやる課」なんですよ。人を信用しない(笑)。でも自分がちょっと弱っているときは、むちゃくちゃ人に頼る。(笑)どっちやねん!
楠:ありますよね。波がね。
福田:多分性格は直しようがないのかもしれませんね。
特にコロナになってから、ニューロンがピピピピッと動く場面があるんですよ。例えば、誰もいないレストランなのに、店員さんがずっとアルコールで拭いたりしていると「どうしてDXしないの?」って言いたくなるんですよ。これはね、UVC- LED(深紫外LED:ウイルスや細菌の遺伝子情報を壊す波長の短い紫外線を発するLEDのこと)をバーッと照射したらおしまいちゃうの? っていうね。60万円だけど、ダスキンのリースでやったら2~3万で、人件費より安いよ、というように。普段は飲食業とかにあまり関心ないのに。
あとは、来店時のAI健診。検温と見せかけておいて、あれは来店データなので、何時何分誰が来た、男、女、年齢、全部プロファイリングできるんですよ。そうするとね、来店データが取れるじゃないですか。実は今そういうプログラムを作ってもらっているんですよ。その機械は、最初に見たときにパッと欲しくなって、メーカーをすぐに書き取って連絡してたら、1台150万だったんですよ。でも、こんなものに150万なんてあり得ないって話になって。メーカーとタイアップして制作して、実をいうと今30万円で販売しております。
楠:えー!
福田:要るでしょ? あれ。月の、「人1人」の人件費ですから。
楠:確かに。
福田:別にこれを売ることが最終の目的じゃないんです。これとデータマーケティングを組み合わせ、通信会社と組んで、位置情報でお客さんの回遊が全部分かるサービスが400万ぐらいでできるんです。とあるクライアントにも話しているんですけど、例えばあるお客さんが、来店する前に温泉に入ってきたとか、これからどこに行くとか、そんな風にビッグデータを扱えたら、「売り場をこう変えようか」と、売り場のABテストができるじゃないですか。つまり、総合的なマーケティングツールとしてまずAI検温器を入れましょうと。AIにいろいろなパターンを覚え込ませたら、たとえマスクをしていても、年齢も分かるんですよ。