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営業力ここに極まれり

「プロ営業師」が伝授する、人たらし術とは  Talked.jp

高山:あと、「営業力ここに極まったな」という出来事が、実はつい最近あったんです。

福田:本が出た後の話だから、新情報だね。

高山:はい。最近バーベキューにハマっていて、チャリンコでスーパーに肉を買いに行ったんですよ。で、店に入ろうとしたらチャリンコが倒れて、止まっていた車にバーンとぶつかったんですよ。

福田:車に? 自転車じゃなくて。

高山:はい。俺のチャリンコが車にぶつかって、本当に少しですけど、これは傷を付けてしまったなと思って。そうしたらおじさんが「おいおいおい!」って出てきたんですよ。「ヤバ、これは絶対に5万から10万だな。嫌だな。どうしよう、どうしよう」ってなって。そこで咄嗟に、自分なら怒っている時に何をされたら一番許してしまうかな? いきなり謝られることだなと考えて、「本当にすみませんでした! 申し訳ございません!」って謝ったんです。「これ、傷が付いちゃってるじゃないか!」「これは傷ですね。これは私が付けた傷です」とか言って。

福田:全部認める。

高山:全部認める。そのうちその人の奥さんが車に戻ってきて「何、何、何?」となって。「奥さま、すみません。大切なお車に。すみません」とまた謝っていたら、「ああ、まあいいや。反省もしているし」「いや、もう本当に、そんな、めっそうもないです」っていう感じに…。

福田:「弁償します」とは言わず、ただただ謝る。

高山:「ああ、いい。今回は」「すみません! 本当にすみませんでした!」「ヤベ、事なきを得たわ」って。

福田:僕もそういえば大昔に似たことがあったよ。あるクライアントが怒って「土曜日に会社まで来い」と言ってきたので、言われた通り土曜日に行ったわけ。事前には代理店の人からことの経緯のドキュメントを見せられて、「ここは事実です」「ここは絶対に認めないです。本当にやっていませんから」「これを認めると大変なことになるので…分かりました?」「分かった。完璧だよ」なんていうやりとりがあって。先方に着いたら、もう入口から役員並べて威圧され、我々もうなだれて座るみたいなムードでね。約束は朝10時だったかな。でもそういう時って、相手は10時に現れない。緊張感を高める戦略ですよ。シーンとする中、コツコツコツコツコツと社長が入って来て椅子に座り、「うん。どういうことなんだ? 今回のことは」と。そこで僕は「全て私が悪うございました!」と言ったわけ。山一証券の社長の謝罪会見みたいなイメージで謝ったんだよね。

高山:そうしたら、どうなったんですか?

福田:全部認めたから、それ以上話はないよね。あとは雑談で終わり。だって「悪い」って言っているんだから。横にいた代理店の人は「えーっ?」「あのブリーフはなんだったんだ」という感じだったけどね。でも僕は経緯を聞いている途中で、「これだけは認めるけど、これは認めない、というのは駄目だな」って思ったんだよね。こちらに少しは悪いところがあったから、相手は怒ったわけだからね。でも結局、相手の担当役員が全部うちのせいにした部分が大きかったとわかった。

高山:なるほど。結局、俺のチャリンコの件は、弁償100か0かっていう話で。もちろん0で済んだらうれしいですけど、もし許して貰えなかったときの最終的な落としどころも考えていました、財布の中に1万2000円ぐらい入っていたので、その1万2000円と小銭を全部だして「これで勘弁してください!」と言うつもりでした。

福田:そうやって最大の誠意を見せる。分かる、分かる。

高山:やってしまったものはしょうがないので、少しでも痛みを減らすコミュニケーションが必要だと思います。

福田:それは街に出ている人特有だね。人間力ですよ。でも、僕はもうちょっと性格がひねくれているので、さっきの謝罪の後、帰ってる途中から「お金払っているから言うこと聞け、的な対応がけしからんな」と思い始めて…。「あの会社との取引はやめよ!」って(笑)

高山:逆に!!

福田:そう、逆にね。だから、「今後仕事を頼まれても、断れ」とスタッフに言って、それ以降何回か依頼があったけど全部断った。何年か経った後、ある店でその社長と偶然会ったので「元気ですか?」って声を掛けたんだよね。そうしたら、「福田さん、久しぶり。またうちの仕事を受けてよ」って言われて笑顔で「いや、お断りします」と…それが最後。だってその人は出禁だから。

高山:自分が、じゃなくてその人が出禁…

福田:お金をもらっているとか関係ない。自分の日常は続くわけじゃない?

高山:そうなんですよね。意外とそんなことでは死なない。

福田:そう。上司に怒られても死なないからね。だから、上司に怒られて死のうと思うのは間違い。絶対、間違いだよ。

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