本当に残したい財産とは
福田:自分が得意なのは、お金儲けプラス、それを使う力があるところです。すぐ使うんですよ。もちろん、無茶苦茶に使って無くなるということはないんですけれど。 最近の30代くらいの起業家はお金を稼ぐのがうまい人でも、使うのがめちゃくちゃ下手だから、見ていて歯痒いんですよね。 はじめてお金を持つと、高級車を買ったりハイブランドの服を買ったり。いろんなことをするんだけど、それだけじゃ満たされないところに至ります。ITやって頭角を表してきた経営者は、たくさん合コンをやってモテようとするんだけど、そう簡単じゃない。 心の充足がないからそうなります。心の充足は、人を助けるとか、社会に良いことしないと出てこない感覚でしょう。ちゃんとお金を使う筋力を蓄えてやっていかないとダメなんですよね。
山﨑:私もそう思います。だから、バンカーの時にクライアントの方によくお伝えしていたのは、「お金を増やすことももちろんサポートしますけど、活きたお金の使い方をサポートするのも私の仕事です」って。
福田:素晴らしいですね。
山﨑:極端に言うと、「何をするというのが決まってないのでしたら、べつに投資しなくてもよいのではないでしょうか。マーケットで一喜一憂するくらいでしたら、置いておけばいいんですよ。日本なんてずっとデフレで価値はそんなに変わらないです」というお話をさせていただくことがあります。「運用したいだけなら、それをコンサルティングしてくれる人のところに行ってください」と。「運用したいけど、ちゃんと生き金にもしたいとお考えでしたら、たぶん私がぴったりです」と申し上げます。
福田:僕は50歳を過ぎてからの起業だったので……。社長業自体は長くやっていましたけど、絶対に身内を会社に入れないというのを最初に決めているんです。子どもにはそれを言ったんですけど、「パパの会社を頼りにしていないよ」というお言葉をいただきました(笑) この会社が自分の代で終わっていいと思うと、プラマイゼロで死ねるんですよ。だから、人のためになることをしようと思う以外に、お金を貯める理由がないんです。
山﨑:素敵ですね。
福田:でも、同じ企業に孫とかがいると、もう社会のためというよりも、「一族の継続のため」というふうに視点がいっちゃうでしょうからね。それが会社の恐ろしいところですね。
山﨑:だから「もしも会社に何かあったとき、お子さんたちとか、お孫さんたちに最後に残したいものは何ですか?」という質問は、ちょいちょい……今だなって思うタイミングで投げています。
福田:どういう答えなんですか? お金……なんでしょうか?
山﨑:もちろんお金は残せるなら残してあげたいって皆さん言いますよね。逆に、「なんだと思う?」と聞かれることもあります。私の答えはもう決まっていて、「教育」と「ネットワーク」と「経験」。もうこれだけですよ。
福田:明解だ!
山﨑:「お金があるんだったら、とにかくこの3つを子どものために、そういう環境を作るためにかけてあげたらどうですか?」と。チャレンジする場とか、ネットワークですね。だから結局、皆さん留学をさせたりしますね。 その3つがあれば、たとえお金がなくなっても、その人には経験とコネクションは絶対に残る……。あと知識ですね。知識や知恵は誰も奪えませんから。「お金は奪われますよ」って。
福田:うわ~、いい話だわ。
山﨑:自立の術を渡していくことだけが、私がバンカーとして見てきた究極の形だと思っています……とかって言うと、皆さん「はぁ~(ため息)」って(笑)
福田:今の素晴らしいですね。今のこの教訓、プライスレスな話だと思います。