企業戦士のよろいを脱いでみよう
福田:いま、日本企業でグローバルに頑張っているところといえば、メルカリやチームラボなどでしょうか。日本を代表する企業は本当に少ない。そういう中でレジェンドだった20世紀の日本の企業は、どういうふうに変わっていけば、人も変わり、企業内も変わっていくんでしょうか。
白河:粘土層の人たちがメンバーシップ型雇用を変えられないところに課題がありますよね。お給料の体系などがなかなか……。一度上がった給料を下げるのは「不利益変更」になるので、すごく大変です。今はジョブ型などと、いろいろな言い訳をして下げようとしているのですけど、ある一定以上の年齢の人には出て行って欲しいという経営者の本音を感じます。赤字リストラではなくて、黒字リストラもしていたのはなぜかというと、その人たちがいると上が詰まっていて変化が起きないから。企業もパラダイムシフトが欲しい。けれど変化を拒む人たちがいると、なかなかパラダイムシフトはおきません。でも、日本全体のことを考えると、外に出す前にもうちょっと企業戦士のよろいを剥げるような仕掛けをしないと。新卒からずっと履歴書を書いたことがない人が外に行っても、露頭に迷いそうで心配です。福田さんは、剥がれすぎかもしれない印象ですけれども(笑)。常に服を着ていない自由さがすごいです。
福田:裸、裸(笑)。
白河:これからはもっとよろいを脱いで柔軟な人材になっていかないと、中にとどまるにしても外に行って転職するにしても、はっきり言って死屍累々です。それで、家族がものすごく影響を受けるじゃないですか。子どもはまだ教育費がかかる年頃のご家庭が多いですし。だからまずは企業の中にいるうちに、研修などを積極的に行って、おじさんたちのよろいを脱がせ、新しい武器をあげるようなことをやってください、というのが本書の趣旨の1つなのです。
福田:なるほど。救いがありますよね。面白いです。
白河:いきなり社会に放り出すと、かなりの人が大変なことになると思うので……。
福田:会議回しがうまいだけの人や、ごますりばかりの人が、コロナですっかり役割を失っちゃったと言われているけど、多分本人が一番よく分かっているはずですよね。「じゃあいいよ。こういう状況だし、割増退職金をもらって辞めてやるよ」ということで、訓練がないまま大量に放り出してしまったら、日本の国力が下がるかもしれません。
白河:おっしゃる通りです。不機嫌なおじさんがあちこちで不機嫌をばらまくと、それはもう、国全体の生産性が下がります。
福田:会社は、長年染み付いた企業の”よろい”を脱がせるためのコストをかけないから、やっぱり国の仕事じゃないかなと思います。その方が国力があがる気がします。1億総活躍できるかどうかは分かりませんけど。個人でできる人は1割いないのでは。
白河:国の仕事ですか。でも、そうですね。スウェーデンは既にやっていますね。男性は今時代の変化によって危機を迎えているので、男性向けの相談センターのようなものができているのです。
福田:待機児童のような単純なこともいつまでたっても解決できないから、お母さんもいつまでたっても家から出られない。もともと流動性がない国民で、サラリーマンが多い。何をやってもガチガチじゃないですか。
白河:そうですね。どこかで詰まっちゃう。
福田:それがちゃんと結果に表れていて、国力が下がっている。だけど何の手も打たないという。僕はぎりぎりまで絶望するしかないな、と思っています。