一歩離れて俯瞰すること
コミンズ:福田さんのお話は、やっぱり面白いですね。先を見据えておられるから。
福田:でもね、最近は「毎日が連続していないな」と感じることが多いです。昨日の連続が今日じゃないって、感じていて。鎌倉時代の人に、今日のICTの社会が想像できないのと同じように、あるときを境にして、急に変わる。
コミンズ:そうなんですよね。僕も去年の緊急事態宣言のときに、僕なりの考えをまとめたりもしました。コロナで亡くなった方もたくさんいますし、その一人ひとりの家族の思いを見てみると、もちろんそれぞれ不幸です。でも、もっとでかい目で見ると、僕はむしろコロナほど、社会課題に光を当てているものはないと思いました。ほぼ全ての社会課題を、コロナが浮き彫りにしてくれたんですよね。そうすることによって、動かなくちゃいけなくなるっていう意味では、ある意味このタイミングで起きたのは必然的な感じだなと思いますよね。
福田:そう。前例になったと思う。そしてこういうことが起きたときに、僕が嫌な論調なのは、「やっぱり自然は大切だ」って話。それはもちろん知っている。でも、自然との共生だって言う人は信用できないなって思っていて。だって、人間の営みっていうのは反自然なわけですよね。今、都市化は一時的にポージングしているだけで、また再開すると思うし。そのときの再開の仕方が大事なのであって。例えば農業だったら農業で、「美味しい農作物を作る」というだけではもうダメで、流通・販売まで農家ができて、初めてこれからの農業経済ができるんですよ。
僕は、例えば農業も、ITを駆使することでDX可能な分野と考えています。ドリッピングして、AIで育成管理して、ロボティックスで収穫して、ポストハーベストな輸送で商圏をアジア中に広げる。そういった新しいやり方をモジュール化したいわけ。やり方はすべて反自然です。文明の利器を使いまくる(笑)。
でも、僕が沖縄で農業をやりますっていうと、「土いじりとかいいですね、自然と触れ合えて」とか、まったく見当違いな話をされてキレるんですけど(笑)。そうじゃなくて、文明を推し進めて、さらに経済が成り立つようにやっているんですよ。
コミンズ:本当におっしゃる通りです。一部だけを守ったって何も変わらないよっていう。結局、極論に走った瞬間にもう終わりなんですよね。例えば、僕はヴィーガンと話すために、ヴィーガンドキュメンタリーをめっちゃ見ました。彼らの言うことも分かる。もちろん牛肉用に家畜として飼われているウシが出しているメタンガスの量は半端ないこともわかる。そしてマスファーミングの過程で起きている、動物の虐待も良くないと思います。でもだからと言って、肉を食べることが全部反対っていう話になると、じゃあ今まで作ってきた文明はなんなの?と言いたくなる。
人類の進化って肉を食べてきたからこそ、たんぱく質で脳の栄養が保たれている。それに、「あなたが自分のヴィーガンの発信をしているスマホって、どれだけレアメタルが入っているのか知ってる?」みたいな間接的な話も無数にある。「そのレアメタルを採掘するために、どれだけ生物が殺されているか知ってる?」「そのために……」とかいうのを、二元論にしちゃうんですよね。
今のアメリカも含めて世界中の傾向ではあるんですけど、そこに対する「いやいや、二元論じゃない」というのはいつも思っています。何かが絶対なのではなくて、「一歩離れて、これってどういうことだろう、を考える」っていうのが、人間の動きなんだと知ることが大切じゃないのかな。その中で、一番いい方法を探ればいいと思うんです。サステナビリティっていう意味で言うと、地球も人間も経済も、SDGsって本来そのためにあるので。別に経済の発展を止めてまで、世界を良くするっていう話じゃないですから。
福田:本当にね。それがマスコミによって、また歪められてる。やっぱり寛容さが足りないよね。SNSが発達したことの善し悪しでは、もう語れなくなってきちゃってる。
コミンズ:確かに、そうですね。