教育が変われば日本も変わる
コミンズ:フランスって、義務教育の中にもディベートを入れているんですよ。だからフランス人は逆に、みんながディベートしすぎるから、「この国うざい!」って言ってる人もいっぱいいるくらいで。
福田:そうだよね。日本はそれがなさすぎ。例えば旅をしていると、トランジット(乗り換え)で、ただ荷物ピックアップするだけだったりするのに、知らない人と会話が始まるじゃないですか。3分ぐらい一緒にいるだけなんだけど、連絡先交換するところまでいったりする。
コミンズ:どこまで本当のネタか分からないですけど、日本で一番そういうコミュニケーションが行われたのは、あの数年前の、台風が大きすぎて交通網が麻痺して、成田空港から東京に来られなかったとき、っていうのを聞いたことがあります。1日中隔離されるから、知らないイスラエル人の枕を借りたとか、隣のスペイン人から上着を借りて仲良くなったみたいな。
福田:疑似旅行だ。
コミンズ:そうそう(笑)。ある意味「絶望」じゃないの、それって。みんな帰って来られないから、お互いを頼るしかない。
福田:日本人は万能なパスポートを持っているのに、先進国の中で本当に最下位ぐらい海外に行かないじゃない。だからリベラルになりようがないよね。
コミンズ:そうですね。
福田:紋切り型のマスメディアが、「中国人はこう」「韓国人はこう」「アメリカ人はこう」って言ったら、それを鵜呑みにしちゃうしかないの、実体験がないから。
コミンズ:もし僕が文部科学省大臣にでもなって、義務教育のカリキュラムを変えられるとしたら、2個だけでいいです。ひとつは、強制留学1年。中学生のときに、1年間どこかの国に行かなきゃいけない。それだけで視野は広がりますから。もうひとつは、ディベートの授業を入れること。これをやるだけで日本は変わりますよ。
福田:うん、変わるよね。あと知識の問題についてはアダブティブラーニングで、それぞれの個人の意欲と能力に合わせた方法で、AIが学習をリードしてくれたらいいと思う。
コミンズ:そうですね。ドイツとかに近い考えですね。
福田:学校は、コミュニケーションの場だけにすればいいと思う。まあ、マナーとかは教えてもいい。あともうひとつは、僕は徹底的なエリート教育が必要だと思う。知のレベルを上げる。トップエリートになれるのは一握りしかいないけれど、そこまで行ってドロップした人も、また違う役割を見つけられるじゃないですか。「オレ、これ苦手だったんだな。もっと得意なことやろう」って。例えば、僕の通った日大芸術学部では、同じ映画学科でも、「最初は映画監督になりたいと思っていたけど、照明のほうが向いているかもしれない」「舞台監督が向いているかもしれない」と気づいて、どんどん学びによって変わっていく。それでその後の社会で活躍している人はいっぱいいるわけ。だからそれもある種のエリート教育で、そういうことを目指すほうが全体の教育レベルが上がる。ボトムに合わせていくと、レベルって上がらないと思う。
コミンズ:北欧の教育ですね。お互い、自分の伸び幅に合わせてやるっていう考え方ですよね。
福田:うん。それに、ここまでいったら学費も払わなくていいとか。その理由だけでも頑張る人がいたら、親に強制されない限りいいんじゃないかな、と。