『千里を走る中国取材の道!』(対談 福島 香織 氏 × 福田 淳 氏) | Talked.jp

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対談  福島 香織 氏 × 福田 淳 氏

福島:で、翌年の4月に行ったんです。初めての海外旅行が、私の場合は雲南省の玉龍雪山だったわけなんです。いやー、すごいインパクトで、本当におもしろかったんですよ。
結局、みんな貧乏だから、あのころは上海まで鑑真号(船)で行ったんですよね。そこから列車で昆明から昆明から大理まで行って現地にたどりついて、荷物ピックアップして、玉龍雪山は当然登りませんけれども、山の周辺、ほんとに3700メートルぐらいの富士山より高いところまでは行くわけです。

福田:どれぐらいかかります? 上海から。

福島:丸3日かかったと思いますよ。

福田:食事は?

福島:上海なんかは都会なので普通でしたけど、あの頃は、何て言うか、外国人用の値段と、中国人用の値段が何倍か違うみたいな。

福田:今でも、ちょっと違いますよ。

福島:外国人用のメニュー出してくるので、それでけんかしたりとか、ぼられたりとか、だまされたりとか。1年間第二外国語で勉強したので、片言の中国語を一生懸命話して、それ自体が楽しかったわけですよ。雲南まで行ったら行ったで、今度は荷物持って3日歩いても風景が変わらない。ひたすら歩いて、ようやく向こうのほうに、「ああ、なんか山が見えてきた」って、そんな世界なんです。全行程で、2週間以上かかりましたから。

福田:1年準備したんですもんね。そう簡単に帰れませんよね。

福島:そう。いろんなおもしろいものを見ましたよ。高原の中に突然、雲南省の少数民族で、「初めて外国人見ました」みたいな人たちが暮らす農村が現れたりするわけです。雲南の干海子ってところなんですけども、高原って政治犯がいるんですよ。要するに、島流しみたいな感じで。突然、羊を追っているおじいさんが現れたら、回族の地元ガイドが「あの人、政治犯です」みたいな説明をするんですよ。一生懸命コミュニケーションとってみたら、家族の写真を見せてくれたりとか、「ここにもう15年いる」とか、そういう話をするわけですよ。右派運動とかで、ああいう所に流された人たちが、「まだ、再来年には帰れる」みたいな話をしていて、びっくりしたり・・。中国ってこんな国なんだって、すごく刺激的で。

福田:世界の残酷さを全部表しているような話ですけど。

福島:中国ってすごい、と。例えば、あの頃の上海って夜、真っ暗なんですよ。7時を過ぎると、もうご飯食べるところありません、みたいな。そういうところで、外国人と思ったら料金二重取りでだましてやろうみたいな人たちに揉まれた後に、一転して、全然外国っていうものを知らなくて、「どっから来なすった? 日本? それはどこかな、北京よりも遠いところか?」みたいな人と話すわけです。もうとにかく、ぼろぼろなんですよ。何もないところなんです。「水飲みますか?」って、その辺にたまった汚れた水を汲んで出してくれる。そんな貧しい村で、「ああ、そんな遠いところから来なすったんだったら、とっておきのものを差し上げましょう」みたいな感じで、秘蔵の白酒を開けてくれたりとか、くるみを山のように皿に盛ってきてくれたりとか、「うちの宝物です、家宝です」みたいな感じで、コンゴウインコみたいなオウムを見せてくれたりとか、そんなものすごい草の根レベルの交流をしているうちに、中国が楽しくて仕方なくなりました。