福田:でも、逆に福島さんもそう思われるわけですよね。
福島:はい、向こうでは新聞記者っていうのは、みんなスパイの情報収集インテリジェンスなわけで、私もそう思われていました。そのときにおもしろかったのが、顔合わせのときに、専務がいる場で、向こうの安全部の人・・、あ、もちろん安全部って名札は付けてませんよ、肩書上は「何とか研究会のシンクタンクの学者」みたいな感じなんですけれども、どう見ても諜報員風なんですよ。体躯とかで、わかるわけですよ。その人が産経の専務がいる前で、「オルグしていいですか? りっぱな共産党員にしますよ」みたいなことを言って、あ、私は共産党員にされるんだ、と・・。
福田:育成されちゃうんだと。
福島:にもかかわらず、気が付いたら、中国に嫌がられることばかり書いていたんですよね。そのうちに「ビザ出さない」みたいな話になって。
福田:そんなこともあったんですか?
赴任中に中国を怒らせ、大騒動に
福島:そうですね。98年の夏に行って、1年勉強させてもらって、99年の夏に帰って、それから1、2年、日本で仕事していたんですけど、2001年に香港、それから香港は閉じるからって、2002年にそのまま横すべりで北京に行ったんですけど、2007年に中国側とトラブっちゃって、要するに、中国の嫌がることばかりを書いてしまって、ちょっと話が違うんじゃないか・・。
福田:それは産経新聞の記者として?
福島:はい。「うちでオルグしたはずなのに、こんな子に育てた覚えはありません」みたいに怒らせてしまって、「もうビザ出さない」って言われたんですよ。ビザっていうのは毎年1年更新で、記者証の発行によって担保されるんですけども、中国外交部が「もう発行はしない」と。「何で?」と聞いても理由は言わないんですよね。でも、言うこと聞かないから、もうビザは出さないってそういう単純な理由なんですよ。
福田:なんで言うこと聞かなかったんです? 風土については十分、10年近くわかっていらっしゃって。作法もわかっているわけじゃないですか。
福島:いや、作法をわかっていても、やっぱり新聞記者ですから、うそは書けないので・・・。
福田:うまくオブラートに包んで発信することはできなかった?
福島:うーん、やっぱり、読者がね、喜んでくれるわけですよ。新聞記者がなんで原稿に書いちゃうかって言うと、喜んでもらえるからなんですね。読者に受けるように書いちゃうっていうのは当然ありますよね。
福田:そのときに、ある程度、署名記事ってあったんでしょ?
福島:特派員は基本、全部、署名記事です。中国について自分自身がだんだんわかってくると、本当はこんな国なんですよ、こんなことがありますよって、書いてしまうわけですよね。というのも、特派員になると、日本メディアだけじゃなくて、欧米メディアとも一緒に仕事するわけです。そうすると、やっぱりBBCとかCNNとか、本当に果敢なんですよ。私も中国のエイズ村とかにも潜入しましたけど、BBCも行ってる、CNNも行ってる、何で日本のメディアは行かないんだ、みたいな感じですよね。
福田:記者魂ですよね。
福島:「あいつらが行っているんだったら、私も!」みたいなライバル心は、やっぱり芽生えるわけです。でも、そういうことばっかりしていると、中国側は欧米メディアに対しては強く言えなくても、日本メディアにやられるとなんか腹立つところがあるんですよね。
福田:欧米人に弱いですからね。