中国エンタメも“すぐやる課”?
福田:僕の肌感覚ですけども、30代にロサンゼルスで仕事をしていた頃は、話せばパッと済む風土が強かったと思います。案件が多かったんです。その時のスピード感で仕事できるのは、中国ですね。行って話すとその場で決まって、ちゃんと契約されて進むので、前述の僕のメンターが言っていた“すぐやる課”になっている。たとえば、中国で映画のキャスティングとか面白くて、「こんな監督でこんな予算があって、どうする?」っていうときに役者に「どれやりたい?」って聞くんですよ。プロデューサーが、やりたい役をやらせるんです。それっていい加減じゃないですか。だけど、それで成り立っているんですよ。中国で脱税騒動があった女優のファン・ビンビンさんって、1本当たりのギャラが5000万円と言われていて。あっちのシリーズはだいたい38本、40本ぐらいなので、テレビシリーズ1作に出ると20億円になるわけです。だから、日本の10倍くらい規模で制作しているのに、実に軽やかに物事が進んでいて感心しました。
守屋:なるほど。そうですよね。
福田:弊社の”のん”も、中国のクライアントがいくつかありますけど、コロナ禍でも、全部リモートで中国からの指示を受けて東京で撮影して、それを納品する、ということをやっています。中国に行かなくても全然問題ない。それでやりきるのがすごいところ。日本だったら、キャンセルになると思いますよ。それは、「できる」っていうところまでのイマジネーションが足りないからじゃないかな。守屋さんほどの経験がおありになって、「できる」っていうところまでのビジョンを持つことができたら、どういう材料を渡されても余裕じゃないですかね。
守屋:いやいや。でも、量をこなしていると、初見でもなんとなく既視感があったりするじゃないですか。僕はラクスルの立ち上げができたのは、ミスミという会社の経験があったからで、さらには、そのミスミやラクスルのパターンを他のインダストリでも展開しているだけ。八百屋をやった後に果物屋をやっている感じなんですね。八百屋と果物屋って違うっちゃ違うんだけど、違うところを見るから違うように見えるだけで、同じところを見たら結構似てるよね、みたいな。
福田:世界的には分けていなくて一緒の店でやっていることが多いですよね。
守屋:はい、そんな感じなんですよね。医療、介護、ヘルスケアっていう領域も色々とやっていると、やっぱり隣の問題って透けて見えるじゃないですか。「ここで戦って勝てた勝ち方」というのは、きっと隣でやっても結構似ていたりする。逆に「この人のしっぽを踏むと、いいことないんだな」とかいうのは、何となく同じような感じだったりするので。
福田:でも、農業だけではなくて、医療の方までやっている守屋さんはすごいですよ。隣といっても、医療の分野って農業の何倍もバリアがあるでしょうから。強さが半端ないと思います。