農業は継がず、ITの道へ
福田:秋元さんはご実家が農家だったのに、新卒でDeNAに入社されてIT業界に行かれたわけですよね? そのご経歴にも関心が湧きました。というか、もともとITの方に進みたかったんですか?
秋元:実家の農業は、中学校のときに廃業してしまったんですよね。
福田:でも土地はあった?
秋元:土地はありました。家の周りにあったんですけど、親からはもうずっと、「農業は継ぐな」と言われていたので。
福田:それはどうしてですか?
秋元:ひと言で言えば、儲からないからですね。まさにうちは典型的な日本人の職人気質の農家で。私は一応、6代目のはずだったんですけど……。
福田:ええ~! すごいですね、江戸時代からですか?
秋元:いつからなのかは、わからないんですけど……。本当は6代目のはずでしたが、途切れてしまって。私が子どもの頃は祖父が農業をやっていました。本当に、一番効率が悪いと言われている少量多品目で、年間50種類以上を育てて、自分たちで食べながら維持出荷するというようなことをやっていたんですけども。小学生くらいの時は、農業体験で同級生が実家に遊びに来たりして、すごく自慢の畑でした。でも廃業して、そこからは「継ぐな」と言われていたので、農業を仕事として捉えたことはなく、普通に就職活動をしてDeNAに入社しました。
福田:廃業された後も、家庭菜園的なことはあったんでしょうか? そこで野菜を採って、みたいな。
秋元:母が今ちょっとやっているくらいで、私自身はなかったですね。子どもの頃、実家がまだガッツリ農業をやっていた時は手伝いをしたりはしましたが。
福田:記憶はあるんですね。
秋元:あります、あります。中学校の時に廃業しているので、それなりに記憶は残っていて。それでDeNAで働いている時に、ひょんなことから「農地を使って土日にイベントをやろう!」という話が盛り上がったんです。「実家に農地があるし、そこでやろう」みたいな感じで。で、久しぶりに実家の農地を見に行ったら、当たり前ですけど、10年以上何もしていないので耕作放棄地(*1)になってしまっていて。(昔はすごくきれいだったのに、こんなになっちゃったんだ……)というので、何で農業をやめちゃったんだろうっていう疑問を抱いて、少しずつ興味を持ち始めて……というのが、最初ですね。
(*1)農作物が1年以上作付けされず、農家が数年の内に作付けする予定が無いと回答した田畑、果樹園。世界農林業センサスで定義づけられている。