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コンテンツ寄りのアメリカと インフラ寄りの日本

“のん”という熱量が生んだ映画『Ribbon』製作統括・福田 淳×エグゼクティブ・プロデューサー・宮川朋之 (後編) Talked.jp

福田:Z世代は短尺映像を好むと言うけれど、実は「イッキ見」するので、1視聴あたりの総時間は伸びていますね。そう考えると、2時間の映画企画が持ち込まれたとき、「あなた、たった2時間しか描きたいことはないんですか」とプロデューサーに問われてしまう時代かもしれません。
つまり、書籍の場合は200ページくらいしかテキストを書けないけれども、kindleであれば制限はないので、「400ページだってオレは書けるぜ!」っていう話です。今、みすず書房の哲学書なんてものすごい分厚い本でも、読書会イベントを行うと大人気なんだそうです。だからやっぱり、ローカルを突き詰めたときにグローバルたどり着く。繰り返しになりますけど、それが『イカゲーム』の教訓かな、と。

宮川:韓国ドラマも毎話尺が違いますしね。日本のドラマは尺が決まっているので、どうしても内容を薄めなければならない部分もあります。そのあたりが地上波主義で制作されてきたものが、動画配信の登場で一気に崩れてきましたよね。映画も2時間の作品を作るために、4時間分削られているとしたら、映画ファンにとってはこんな屈辱はないんですよ。配信万歳ですよね。そう考えると、日本は20年ほど遅れてしまったと思います。私たち有料放送も安穏としているうちに出遅れを招いたと思います。

福田:日本マーケットは、みんなが遅れていてブルーオーシャンだから、目利きの経営者は勝てるっていう皮肉な見方もありますけどもね。
韓国は2002年の『冬のソナタ』のヒット以降、ブームが去ってしまった後で、彼らは猛烈に学んで、もの凄いスピードでDX化を進めたわけです。それは先述のStudio Dragonの話の通り。でも日本はいまだに「オレはテレビ局の幹部の誰それを知ってるから」とか「映画会社の幹部を知ってるから」とか、業界の偉い人を接待して仕事をとってくるとか……周回遅れもいいところ。だけど、ものづくりっていうのはそういうフレームだとか、BtoB的なことじゃなくて、しつこいですけれども「最も個人的なこと」じゃないですか。
映画やドラマのヒエラルキーにしても、トップにテレビ局があって次が制作会社、そして芸能プロダクション、俳優という順番。一方のハリウッドでは、俳優がいて映画制作会社がいて、ディストリビューター(配給事業者)がいて、テレビ局。構造がまったく違います。アメリカがコンテンツ寄りだとするならば、日本はインフラ寄り。このインフラ屋さん(=テレビ局)が強すぎて、ずっと勝ち続けるという構造のままできてしまったから、感性というソフトの部分が鈍くなってしまったというのが僕の認識です。小松左京さんは偉大だし、山崎豊子さんも素晴らしい。だけどそろそろ21世紀の新しい作家や脚本家を大きく起用してもいいでしょう。先程、宮川さんがおっしゃったように、「粗削りのエネルギーをそのまま出せれば」ということを僕は考えますね。野性的なプロデューサーがもっと増えていかないといけないし、増えなかったとしても、今は1点でブレイクスルーできるしくみができているのだから、前よりか期待が持てる、という見方だってできますよね。

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