Netflixのハリウッド化は「終わりのはじまり」
福田:Netflix礼賛話が続きましたが、僕は昨年末、レオナルド・ディカプリオの『ドント・ルック・アップ』(*5)を観たときに、「Netflixは早い段階で、ハリウッド化してしまったな」と、じつは終わりのはじまりを感じたんですよ。Netflix史上、1週間で視聴された時間が1億5000万時間超えと、最も長い作品になったのは記憶に新しいところです。
ただ、Netflixの良さは、繰り返しになりますけど、多様性でダイバーシティであるところ。偏在化していかなければならないのに、Netflixはデータマイニングの会社であるがゆえに、加入者が増えれば増えるほど、欲望の最大母数がハリウッド寄りになってしまうという、アルゴリズムの皮肉な罠にハマってしまったんじゃないのかな、と思いました。
宮川:Netflixのハリウッド化という話は、目から鱗ですね。Netflixの世界シェアも20%に満たない。まだ80%以上シェアが残っているのに、20%を守ろうとするんだという発想は新しい見方ですね。まさに、植村伴次郎イズムですね。
福田:脳の最大公約数を救い上げるシステムを作ったことで、ハリウッドにはない多様性が生まれたのに、加入者が増えれば増えるほどマスになってしまうというアルゴリズムの罠なんですよね。Netflixがこのアルゴリズムの罠をどうやって裏切るのか。彼らは賢いから、そのプログラミングにすでに着手している気もしますけれど、そこを突いていくことはアジア人にはできるのでは、と思いますね。
3年くらい前から、800年周期でアジアの時代が来ているんですよ。米中関係は悪いんですけど。「中国=悪」と思うよう、操作されている可能性もありますよね。日本人も1990年代を思い出してくださいよ。デトロイトでトヨタ車がハンマーでやっつけられたり、ソニー創業者の盛田昭夫さんがコロンビア・ピクチャーズを、コカ・コーラから買収したらボロカスに言われたり。アメリカでは中国と同じようなことをされました。それはアメリカが悪いということではなくて、そういう歴史上の認識をちゃんと持ってして中国を評価して、中国のポテンシャルでアジアは一つになるべきではないかな、と。たとえばAmazonプライムから製作資金を出してもらって、ドラマを作ったとしても、Amazonプライムは中国で視聴できない。「じゃあテンセントで配信するから、テンセントからも半分お金を出してもらって、Netflixとかほかの配信プラットフォームからも半分くらい出してもらおう」ということだって、仕組みとしてはできる可能性があるわけでしょう。僕は世界中のどこの連中とだってアクセスできるので、まずは「絶対にできるんだ」という仮説を立てていきます。でも日本人は行かないでしょう? でもコロナが収束したらすぐさま世界中に行くべきです。行って、今の世界を見るべきです。
(*5) 2021年公開のアメリカのブラックコメディ映画。アダム・マッケイが脚本・共同製作・監督を務める本作では、ジェニファー・ローレンスとレオナルド・ディカプリオを中心としたアンサンブル・キャストが登場し、2人の天文学者が、地球を破壊する小惑星について人類に警告を発するためにメディア・ツアーを行う姿を描く。Netflixで2021年12月24日から配信された。