『学生街の喫茶店』は土俵際の「ヒット」だった
川添:で、そんなアルバムをつくったりしていたんですね。ほかにも「ヘアー」のキャストだった青年3人組のレコーディングもしました。ところが、僕たちのつくる音楽は、当時では早すぎちゃったのか、全然売れないわけ。最後にはもうお金がなくなっちゃって。ところが、あるときなぜか、このガロっていう3人組のグループの、ミッキー・カーチスがプロデュースした『学生街の喫茶店』という曲が突然、ドーン!と大ヒットしたんですよ。
福田:大有名な曲ですよね。
川添:それで何十万枚、何百万枚も売れちゃって、「もう土俵際」「土壇場」というところで、うっちゃりで息を吹き返して優勝しちゃった、みたいな感じで。僕と村井くんとで、その後もいっぱい音楽づくりをやるんだけど、そういうことがいっぱい起きたんです。
福田:だから、やっぱり川添さんは「持って」いらっしゃる方なんですよね。ヒットの神様を。だって普通は、それ、出ないですよ。でも、なぜなんでしょう。やっぱりどうしても「ヒットのコツ」をつかみたいからお聞きしますけど、しつこいとか、諦めないみたいなことも、おありになったんじゃないですか?
川添:そこは、自分ではあまり自覚していませんでしたね。「この音楽はかっこいい」と自分が思ったものをただつくる。そこは、徹底していましたけれど。
福田:でもね、そんなこと言って売れない音楽プロデューサーは、いっぱいいますよ。「好きなことしかやらない」って、それ言ってるだけじゃ売れないですよね。
川添:売れないね(笑)
福田:だから、どこかにやっぱりもうちょっと……「オーディエンスはこれが好きかもしれない」みたいな視点をお持ちなのでは。うーん、なんでしょうね。今日は川添さんの歴史をお聞きしながら、このテーマをひたすら探る対談になりますよ(笑)
川添:あのね、(ヒットについて)一番大事なことは、「マーケティングはやらない」ということなんです。一切やらない。
福田:いま、すごいことをお聞きしました。マーケティングはやらない。そしていいものをつくる!?
川添:そう。そしてやっぱり、なるべく人がやっていないことをやる。
福田:そこ、大事ですよね。
川添:そうじゃないと、他でいっぱい売れているものの中に入ったらOne of Themになっちゃう。全然、他とは違うものをやるから、スーパーヒットになるわけですね。だから世の中で、「今年は白が流行っている」といったら、わざと黒を着るとかね。そういう精神が大事ですよね。
福田:わかります!
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