「生きていて、なんぼ」「いのち」の視点から見る、メディア・政治経済・教育(後編)

「生きていて、なんぼ」「いのち」の視点から見る、メディア・政治経済・教育(後編)

編集・構成:井尾淳子
撮影:越間 有紀子
日程:2023年2月9日

野中 ともよ(写真/右)

NPO法人ガイア・イニシアティブ代表、ローマクラブ正会員、中部大学客員教授。 1979年より日本放送協会(NHK)にて『海外ウィークリー』『サンデースポーツスペシャル』等、テレビ東京『ワールドビジネス・サテライト』の番組メインキャスターを務めるなど国際社会の動向を前線から伝えるジャーナリストとして活躍。1988年ソウルオリンピック(開・閉会式中継含む)現地メインキャスター、1999年NHK衛生第2放送『米国アカデミー賞授賞式』L.A.現地メインキャスター。アサヒビール、ニッポン放送、日本ユニシス、日興フィナンシャル・インテリジェンスなどの企業役員を歴任後、三洋電機会長を務め、“いのち"を軸にした環境負荷の低い商品こそがグローバルマーケットを制するカギであるとする “Think Gaia” ブランドを立ち上げるなど卓越した経営手腕を示した。2007年にNPO法人ガイア・イニシアティブを立ち上げ、人間も地球という生命体“GAIA”の一員として振る舞うべきことを説く。財政制度審議会、法制審議会、中央教育審議会、沖縄振興審議会委員、内閣構造改革特別区域推進本部教育評価委員長など政府審議会委員を歴任。2001年経済界大賞「フラワー賞」、2018年度日本学士会アカデミア賞社会部門を受賞。著書に『私たち「地球人」』(集英社)、『心をつなぐ生き方』(サンマーク出版)『手ごたえのある女 (ワタシ) の人生が始まる本』などがある。

福田 淳(写真/左)

連続起業家
1965年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。
ソニー・デジタルエンタテインメント創業者
横浜美術大学 客員教授、金沢工業大学大学院 客員教授。
タレントエージェント、ロサンゼルスを拠点としたアートギャラリー、沖縄でリゾートホテル運営、大規模ファーム展開、エストニア発のデジタルコンテンツ開発、スタートアップ投資など活動は多岐にわたる。
自社の所属アーティストとは、日本の芸能界にはなかった「米国型エージェント契約」を導入したことでも話題を呼んだ。
1998年、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント社 バイス・プレジデントとして、衛星放送「アニマックス」「AXN」 などの立ち上げに関わる。
カルティエ「チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー」受賞 (2016年)
ワーナー・ブラザース「BEST MARKETER OF THE YEAR」3年連続受賞 (2012-14年)
日経ウェブ「21世紀をよむITキーパーソン51人の1人」選出 (2001年)
文化庁 「コンテンツ調査会」委員
経済産業省 「情報大航海時代考える研究会」委員
総務省 「メディア・ソフト研究会」委員
著書

『ストリート系都市2022』(高陵社書店)
『スイスイ生きるコロナ時代』(髙陵社書店) 共著 坂井直樹氏
『パラダイムシフトできてる?』(スピーディ出版)
『SNSで儲かるなんて思ってないですよね?』(小学館)
『これでいいのだ14歳。』(講談社)
『町の声はウソ』(サテマガ)

(株)スピーディ 代表取締役社長
Speedy Gallery Inc. (CA, U.S.) - President
Speedy Euro OU - President

NPO「アシャンテママ」 代表理事
NPO「ファザリング・ジャパン」監事
公式サイト:
http://AtsushiFukuda.com
YouTube対談動画
https://m.youtube.com/@talkedjp

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福田:先日、女優の渡辺えりさんのお話に、とても共感したんです。「私は、日本のドラマのプロデューサーと監督を全員女性にしたい」とおっしゃったんです。「男性が作るドラマではずっと、奥さんはいつもキッチンに立っているシーンしか描かれてこなかった。だから私には、気のいい田舎のおばちゃんの役しかこない。けれど実際の私はもっとパンクで違うんだ」と。けれどそういう役ばかり演じていると、見る人も、「お母さんは必ず台所に立っていなければいけないものだ、思ってしまうじゃないか」と。一方アメリカ映画だとそんな文化はなくて、男性がキッチンに立つことなんかは、まったく普通の光景で描かれています。別に、料理が好きな人が作ればいいわけなので。だから、「好きな人が好きなようにある」っていう状態を、メディアが見せないから社会が変わらないんじゃないかな、と思ったんですね。 ジャーナリズム精神もそうなんですけど、僕は真面目に、ドラマ一つで、社会を変えられると思っているんですよ。弊社の女優・のんが主演で優秀主演女優を受賞した映画『さかなのこ』のように、男の子の役を女の子がやるなど、そういう価値観の転換みたいなことが普通に起きても、何も問題ないと思うんです。 …というと、「いやそれは問題だ!」と言う人もいらっしゃるので、議論する時間が足りないぐらいですよ(笑)

野中:わからない方にはいくら言っても分わかってもらえないので、「あなたはどこから生まれてきましたか?」「お父さんの穴からは生まれていませんよね?」といのちの話をしています。…NHK的ですか?(笑)

福田:いえいえ(笑)ぜひ解説をお願いします。

野中:芸能界の問題であれ、ジャーナリズム云々が問われる例えば政治・経済の現場であれ、そもそも私たちは生きていてなんぼ、なんですよね。生きているからコンフリクト(論争)もあるし、そして喜びもあるし。けれど一粒一粒のいのちは、実は生きているというよりも、「生かされている存在」でしかないのではないか。これはスピリチュアルな文脈でとる人もいるかもしれませんが、でも生物学的、バイオロジカルに見てもそうなんですよね。

福田:そうかもしれない。それは分かります。

野中:たとえば今この部屋を全部閉め切って「はい、酸素を全部抜きます」と、パタン、と死ぬわけです。だから酸素のおかげで生かされているという事実が見えてきて「ありがとう」(笑)

福田:ほんとです(笑)

野中:空気に加えて、水と食べる物と太陽が毎日出てくれるので、さらに「ありがとう」。地球が回っていることなど、考えていたら目が回りますが(笑)この事実を当たり前と呼ぶのか、「ありえないけどすごいな、ありがとう」と思うか。ゴルフに例えれば、ティーグラウンドで体の向きがたったの10センチしか違ってないのに、ドライバーショットはOBになっちゃう。これでは結局勝負にならないわけです…ゴルフはおやりになります?

福田:以前やめましたけど、はい、やっていました。

野中:ゴルフは、真っすぐ、フェアウウェイを直進するゲームですよね。そのゴルフに例えれば、「人生は生まれた時にティーグラウンドで、フェアウェイをいかようにでもいいから、楽しんで転がって行けやー」と言ってくれているようなもので、そこは自分につながるお魚の前の、DNAの螺旋のつながりが、全部支えてくれているのではないか、と思うわけです。ちょっと壮大な例えではありますが(笑)

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