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男社会を捨てる女性が増えている

「生きていて、なんぼ」「いのち」の視点から見る、メディア・政治経済・教育(後編)  Talked.jp

野中:私がずっと言われてきたのは、「女で、よくここまでの仕事ができますね」ということでした。

福田:ええっ? 今なら想像できないような、ひどい言葉ですね。

野中:(笑) 母と父のおかげだと思いますけど、笑って、相手を傷つけないで戦って勝っていく方法が、自分には身についていたからだと思うのですが。

福田:怒りを、別のアグレッシブなエネルギーに変える能力がおありになるんですね、きっと。そしてそれは、誰しもが持っているわけでもないと思います。

野中:もう少しするとトレンドとして出てくると思うんですけども、ビジネスや政治の世界でも、そういう過酷な社会で生き残ってきた女性たちが、去っていっているんですよね。理由は一つで、「わが子と一緒にいたいから」。私自身もそうでした。ビジネスの世界で戦うのであれば、いつまでだって戦う自信はありましたが、娘の命が脅かされそうになることも起きて、辞表を出したんです。夫も、言われなきことをいろいろ書かれました。 そこで「一流企業のトップ?会長?それも大切だけど家族の幸せに比べたら、そんなものの価値などいかばかりもない」と思ったところで、いのちを繋いでいく「女性性」の大きさと責任が見え始めたんです。男社会で戦う人生よりも、娘のおむつを換えているほうが、どれだけ大事で幸せなことか、と語った某首相の言葉が響きますね。ヒューマンビーイングの中身です。

福田:よく分かります。外資にいた20年ぐらい前でも、頂点の時にステップダウンする女性が少なくありませんでした。理由は、出産とかご家族のことが多かった。当時それは、男性には分からない理由でしたよ。今は、社会も理解できるようになりました。

野中:ですよね。だから1時間当たり300万稼げることと、1時間わが子と一緒に遊べるということの、比べようがないこの幸せがあるんですね。

福田:そうかもしれないですね。今、野中さんのご説明を受けると、「当たり前じゃん」と思えるんですけど……。経済活動の中にいると、「なぜそれを捨てて?」「どうして?」「シッターに預ければいいじゃない」と。

野中:そう。シッター雇えるお金もあるじゃないかって。いやいやそんな話じゃあないんですって。会社のために身を粉にして、その緊張関係の中で、株主総会をやって……ということで感じる高揚感は、「やりたい男の子がやればいいのでは」ということでもある(笑)。

福田:ギリシャ神話に出てくるテーマですよね。「戦争は、男に」って。だからもともと女性の方が社会性があって、思考が多様なんでしょうね。男のほうは単純だから、男社会で経済活動がある限りにおいては、女性のことはずっと扱いにくいのかもしれない。だから、森元首相の失言問題などでわかるのは、「女性? もう避けたい。苦手だ」っていう(笑)

野中:誤解のないように言えば、LGBTQの単語としてではなく、要は「女は自分より下」というイメージなのでしょう。なのに、それが頭角を現すのは、もう許しがたいということなんだろうなと。

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