地上波とは違う魅力は「リアリティ」
福田:なるほど。僕は、出演するタレント全員が「わー、これいいね」と100%褒めるほうが、少し嘘くさいようにも思えるんですね。だから提案としては、誰か一人か二人、「うーん、いいんだけどこのへんはちょっと、改善の余地ありじゃない?」なんてリアルなことを言うタレントもキャスティングしては?というものです。もちろんそれは、あらかじめクライアントに言っておく。難しいかもしれませんが、オーナー企業だったらできるんじゃないかな?とも思ったりして。それはなぜかというと、芸能エージェントをやって思うのは、芸能界ってインターネットに弱いところがあって、ネットだけのクライアントを断る傾向があるんです。わけ分かんないし、と。弊社の場合は、オファーのあった企業さんのことを調べて、クリエイティブなサポートをして、いいものであれば全然やらせていただくんですけども。そういうふうにネット時代になってきているのに、芸能事務所のDXが遅いから、どうしても知名度に頼らざるを得なくなってしまう。そうじゃなくて、そのタレントさんも一生活者としての発言をしたほうが、より物が売れるんじゃないかなと思うんですけど。
馬場:ライブコマースの世界で起こっているのは、まさにそういうことなんですよ。
福田:そういうことなんですか?
馬場:そうなんです。だから私のBabanet Channelでも、たまにゲストの方を呼んだりするんですけど、リハーサル一切しないですよ。生のリアクションで「これ、どう思います?」と聞いています。そこで本当にいい物だったら、ゲストもちゃんと褒めてくれます。反対に「これ、私にはイマイチよく分かんない」と言われたら、そのリアクションはそれでありだというわけです。
福田:ありなんですね。いや、すばらしい! そういうリアリティがほしいですよね。
馬場:そうなんです。それができるのがライブコマース。やっぱりテレビの世界のように、クライアントさんがいて、スポンサーさんがいて、となると、その商品を批判するようなことは言えないですよね。一方で、本音の世界があるのがライブコマースだと思うんです。
福田:冒頭でも馬場さんが、「これからはスモールコミュニティだ」とおっしゃったんですけれども、企業も同様で、これからはどんどんセグメンテーションされた小さなセルであるべきですね。だからネット系にはいいクライアントがいっぱいいますよね。「予算がないからテレビには出ない」ではなくて、「テレビに出す意味がないから出ない」というだけなので。ということは非常にストリートに近いというか、大地に近いというか、人に近いというか。そういうセンスで物を売ってきて成功している人が多いですよね。そういう人たちが長く継続して物を売っていくためには、やっぱり優秀なセールスマンであること、メディアでの新しい取り組み。この2つが大事だなと思うんですよね。
馬場:これからは、自分でメディアを選ばなければ、もったいないと思います。昔はテレビスポットに何千万もお金をかけてCMや番組を流していましたけど、もうそういう時代ではなくなりました。
福田:先ほどの鹿児島のカレーのようなクライアントは、どのようにして発掘されているんでしょうか。
馬場:口コミがほとんどです。なので顔を合わせる人には必ず、「いい商品があったら教えてね。教えてね。教えてね」と、人に会うたびに言ってるんですよ。
福田:たしかに人って、絶対3つか4つ「このおすすめを伝えたい」っていうものを持っていますよね。馬場さんの元にもたくさん持ち込まれるでしょうけど、そういう目利きはどのように?
馬場:やっぱりそこも、自分で全部使って、試して、食べることですね。全部試してみて、「あ、これだめだ」となったものはたしかにあります。
福田:そういう時も、お勧めした人に「これ……ちょっと……イマイチ」と?
馬場:言います。ただそこは、「これ……ちょっと……」と言うよりも、「これ、もうちょっとこういうふうになりませんか?」と、提案を言うんですよ。そうすると「やってみます!」となりますね。「それができたら、Babanet Channelで扱ってもらえますか?」と聞かれるので、「ぜひ持ってきてください。ここだけ改良していただければ、うちのチャンネルでどんどん売りたいです」とご提案します。
福田:それは本当に素晴らしいですね!