フォロワーがいなければ、リーダーは成立しない
漆:「ラーニング・ピラミッド」と言って、一つのことを学ぶときに、いちばん知識の定着率の悪いのが5パーセントで、先生から教わるレクチャーなんだそうです。ところが自分が人に教えると、90パーセント以上の定着率があるっていう実験結果が出てるそうです。うちの学校でも、学習にクラウドを取り入れることによって、それが起こったんじゃないかなと。
福田:新しい形のシェアモデルですよね。僕はバブル世代で、「いい車に乗って、お金持ちにならなきゃいけない」という価値観が強い中で育ったんですが、その当時は、みんながリーダーになりたかったんですね。でも、みんなリーダーにはなれないですよね。むしろリーダーは1人か2人で、ほかの人はフォロワーですよね。じゃあ、フォローしているからダメなのかというと、その人がいないと、リーダーも成り立たないわけです。
漆:そうですよね。
福田:象徴的に言うと、ホリエモン世代はまだそういうことを引っ張っていると思うので、適切な言い方じゃないかもしれないのですが。『荒野の七人』じゃないですけども、「俺はナイフ投げ」「私はとにかく馬」とか、みんなが自分の役割を発揮して分かること。それでいいんだよと、教えてあげることが豊かさの追求なのかなと思います。そうでないと、「リーダーになれない人は、蹴落としてもいい」みたいな感じになって、殺伐としてしまいますよね。
ネズミって、ひげが壁に触れていないと、すごく不安になるらしいんですね。何かの実験で、部屋に真ん中にチーズが置いてあって、でもネズミはひげが触らないから、そのチーズは取りにいけないんです。でも、1匹だけイノベーターがいるんですよ。そいつはリーダーなので、取ってきて「大丈夫だよ」と教えると、残りのネズミもみんな、どどどどどってチーズを取りに行くんですね。だから、リーダーの役割というのは、偉いとかそういうことではなくて、どこか変わり物だったり、チャレンジャーだったりして、フォロワーのことを考えて「自分は死を賭して」やっているわけです。教育者も、子どもたち一人ひとりがもっている素養や多様性を発見できる場をつくる、という意味で、イノベーションが求められるんですよね。
漆:リーダーとフォロワーを、いかに組み合わせられるか、ということが大事だと思うんですね。この件に関して、最初に手を挙げて方向性を示すリーダーがいても、次に「いいね」を言ってくれる人がいないと事が進まない。だから、そういういい意味でのフォロワーになる子たちというのも、教育においてはとても大事なんですよね。場面場面で、リーダーとフォロワーが入れ変わっていくような、一人一人が自分の役割を果たせるような環境を、学校の中で作れたらいいなと思っています。