近藤健祐 × 福田淳 対談 意外と知らないキャラビジネス考【中編】

近藤健祐 × 福田淳 対談
意外と知らないキャラビジネス考
【中編】

構成:福田千津子 撮影:越間有紀子

日時:2016年7月25日(月)

場所:ソニー・デジタル エンタテインメント

近藤 健祐氏(写真右)

マインドワークス・エンタテインメント代表取締役
(キャラクタービジネスプロデューサー)
1968年生まれ。早稲田大学社会科学部卒。2社を経てソニーグループの広告代理店に入社(現フロンテッジ)。キャラクターサイト「イーキャラメッケ」の立ち上げを行い、その後2004年マインドワークス・エンタテインメント設立。現在に至る。

福田 淳氏(写真左)

ソニー・デジタル エンタテインメント 社長
1965年生まれ。日本大学芸術学部卒。アニメ専門チャンネル「アニマックス」など多数のニューメディア立ち上げに関わる。(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント バイス・プレジデントを経て現職。

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近藤健祐 × 福田淳 対談 意外と知らないキャラビジネス考【前編】

11.そんなことも知らないで、よく独立しましたね

福田:ソニー・ピクチャーズのデジタルネットワークス部門での仕事を改めて振り返ると、『キャラっぱ!』から着想して始まって、最初はソニー・ピクチャーズの『ダビンチコード』とか大作のゲーム権のライセンスビジネスから入りましたが、高すぎてちっとも売れなくて、『明るいライトン生活』に行きついて、近藤さんと出会って、「これなんだ!」って道が開けた感じでした。もともとライセンスモデルって、映画会社は得意なはずなのに、ハリウッドは手離れしか考えてないんで、不動産業みたいに単に高値で得ることしか考えない。売った先と一緒に市場を作り込む作業については何も知識がないわけですよ。当然、僕も同じような感じだったので、モバイルネットの業界から人を採用して、4、5人でユニット始めたときに、「よし、みんなで100サイト作るよ、もうマスコミに出ちゃったからね」って宣言したら、「技術者が1人もいないんですけど、どうするんですか」って。「え、ホームページビルダーとかあるでしょ」って返したら、「何言ってるんですか」って。「最適化と言いまして、多様なケータイ機種があって、自動で更新したりしますよね」って言われて、「まさか100サイト全部、この4人でやるんですか」って驚かれて、「そうだよ。やるんだよ」って。それでも「さすがに無理ですよ」って訴えられたので、はじめて技術者を入たんです。そうしたらプログラミングしてくれるじゃないですか。「へぇ、テクノロジストって凄いことできるんだ」と感心したら「そんなことも知らないで、よく独立しましたね」と呆れられました(笑)。

近藤:それもう独立後の話なんですね。

福田:独立後なんです。サイトの作り方知らなかったんで、しばらく外注してました。外注したらもうびっくりですよ。いきなり「1携帯サイト作るのに400万円かかります」って言われて。「運用したらサイトにつき月120万円です。100サイトだったら月に1.2億円ですね」みたいな単純積算がくるんですよ。事業計画にそんな項目なかったので、ビビりました。ライセンスモデル中心にやってたので、インフラ運営の作法が全くわかってなかったんですね。で、僕、「ホームページの高等なやつでも駄目か?」って、「駄目ですよ、それは」って言われて。

近藤:ホームページに戻りますって。

福田:で、1個だけフレーム作って、あとは金型工場でやろうと発想したんです。それは植村さんが日ごろ行ってた「『サンダーバード』をテレビで放映したとき、吹き替えを一晩で三つまとめ撮りしたから成功した」という発想に倣ったんですね。よく「テレビ局からは1本あたり同じお金もらって、声優さんには今までの1.5倍払うからって徹夜で3本撮らせてもらい財を成した」って言っていたんですよ。「このやり方だ」って閃いて、「フレームを作って、全くそのメニューを変えない状態で100サイト作るぞ」って、結局、全部で126サイト作ったんですよ。

近藤:そこから、すごかったですもんね。

福田:すごかったです。待ち受けではバンダイに負けましたけど、次世代コンテンツの「デコメ」(絵文字の進化系)では当社がトップになったんです。しばらくして、「着せ替え」(メニューをカスタマイズできる)でもナンバーワンになりました。2011年の東日本大震災でガラケーの時代は終焉を迎えることになるのですね。震災後はその後の展望に絶望したけど、スマホ時代が到来し、LINEが出てきてスタンプシッョプではトップクラスなので、やっぱり、仕事は全部過去から繋がってるのかもしれないですね。

近藤:なんかやっぱりキャラクターに近いところで。

福田:はい。衛星放送「アニマックス」(1998年)の立ち上げの経験が生きていたんですよね。当時すでに「カートゥーンネットワーク」と「キッズステーション」があったのに、どうして後発の「アニマックス」が成功したんだろうって考えると、キラーコンテンツである『ガンダム』と『ドラゴンボール』が2強なんです。あと『ルパン三世』ですかね。で、なんでこんな古い作品がいつまでもいつまでも、スポンサーも付けば有料収入も上がるんだろうと考えたときに、『ガンダム』が子供たち向けのチルドレンズプログラムじゃなくて、大人に見られている点に目を付けたんです。どんなにキッズステーションとカートゥーンネットワークが長くやってても、『ガンダム』出てないと。で、アニメの日本の在庫を全部調べて、データベース作ったら、東映、サンライズ、ADKのアドシステム、東京ムービー新社、この4社で65パーセントのライブラリを保有してることがわかったんですよ。この4社に資本入ってもらったのが大きかった。65パーセント持ってるパートナーがいたから、「アニマックス」は成功したんです。

近藤:なるほど。